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応用脳科学アカデミー

2022年度

ワーキングシニアの心理行動特性:老いに適応するプロセス :増本 康平(神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 准教授)

加齢とともに様々な機能が低下しますが,多くの人が定年を過ぎても働きたいと考えています。加齢に伴う身体機能や認知機能の低下による損失を最小限にし,老いに適応し,生涯にわたる発達と幸福な老い(well-being)を実現するための考え方として,心理学,老年学で支持されているものに選択最適化補償理論があります。選択は,制限に応じた新しい目標や修正された目標を設定すること,最適は,目標達成に必要な機能を良い状態に保つこと,補償は目標達成のための手段が使用できなくなった際に代替手段によって対処することを意味します。本講義では,高齢就労におけるこれらのプロセスについて,加齢に伴う認知機能の特徴をふまえ解説します。

講師

増本 康平 先生
神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 准教授

日時

2022年11月2日(水)13:00~16:10(12:40より受付開始)
※増本先生の講義は、14:20~15:30です。

場所

オンライン講義←ハイブリッド開催より変更になりました

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

増本 康平(ますもと こうへい)先生

現職

  • 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 准教授

経歴

  • 2004年 日本学術振興会特別研究員(DC2)
  • 2005年 大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。
  • 2005年 大阪大学大学院人間科学研究科助教
  • 2007年 島根大学法文学部講師
  • 2011年 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 准教授(現在に至る)
  • 2018年 スタンフォード大学長寿センター客員研究

研究概要

歳をとっても健康でいることが大切なことは言うまでもありません。しかし,加齢とともにさまざまな機能が衰えるのは必然でもあります。老いても心豊かに幸福を感じて生活する(Well-beingの)ために何が必要なのか?感情、注意、記憶、意思決定といった人の情報処理の仕組みを明らかにする認知心理学の立場から,この疑問を明らかにするための研究を行なっています。私の研究の特徴は,加齢による低下がみられない機能に着目し,これらの機能を活用することで低下する機能を補うことが,生活の質を高め,より良い生を実現することを検討している点にあります。

主な業績

図書
  • 増本康平(分担執筆)2021 認知症を正しく知って、予防しよう!(担当箇所:人とのつながりがうむ効果は? ),神戸大学認知症予防推進センター(著), 神戸新聞総合出版センター
  • 増本康平(単著)2018 老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの 中央公論新社 
  • 増本康平(分担執筆) 2018 最新老年心理学(担当箇所:第7章 高齢者の自伝的記憶)松田修(編著), ワールドプランニング
  • 増本康平(分担執筆) 2016 よくわかる高齢者心理学(担当箇所:「社会情動的選択性理論」,「 記憶のしくみと老化の原因」,「短期記憶とワーキングメモリ」,「思い出の記憶(エピソード記憶)」,「知識の記憶(意味記憶)」,「自伝的記憶」,「展望的記憶」,「忘れない記憶(手続き記憶とプライミング)」) 佐藤眞一・権藤恭之(編著)ミネルヴァ書房
  • 佐藤眞一・高山緑・増本康平(共著) 2014 老いのこころ -加齢と成熟の生涯発達心理学 有斐閣
  • 増本康平(単著) 2008 エピソード記憶と行為の認知神経心理学 ナカニシヤ出版
学術論文
  • Masumoto, K., Harada, K., & Shiozaki, M. (2021) Effect of Emotion Regulation on Mental Health of Couples in Long-term Marriages: One-year Followup Study. Japanese Psychological Research, https://doi.org/10.1111/jpr.12325
  • Masumoto K, Shiozaki M, Taishi N (2020) The impact of age on goal-framing for health messages: The mediating effect of interest in health and emotion regulation. PLoS ONE, 15(9), e0238989. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0238989
  • Harada, K., Masumoto, K., Katagiri, K., Fukuzawa, A., Touyama, M., Sonoda, D., … & Okada, S. (2020). Three-year effects of neighborhood social network intervention on mental and physical health of older adults. Aging & Mental Health,25(12), 2235-2245.
  • 塩﨑麻里子・佐藤望・増本康平 (2020). 認知症高齢者の家族介護者が代理意思決定場面で経験した後悔に関する質的調査研究. 老年社会科学, 42, 200-208.
  • Fukuzawa, A., Katagiri, K., Harada, K., Masumoto, K., Chogahara, M., Kondo, N., & Okada, S. (2020). Social networks as a factor in volunteering among elderly Japanese with lower socioeconomic status. Japanese Psychological Research, 62(3), 206-214.
  • Yamamoto, K. & Masumoto, K. (2019) Memory for rules and output monitoring in adults with autism spectrum disorder. Journal of Autism and Developmental Disorders, 49, 4780-4787. doi.org/10.1123/jpah.2018-0366
  • Ueno, D., Masumoto, K., Sato, S., & Gondo, Y. (2019). Age-Related Differences in the International Affective Picture System (IAPS) Valence and Arousal Ratings among Japanese Individuals. Experimental Aging Research, 1-15.
  • Masumoto, K., Yaguchi, T., Matsuda, H., Tani, H., Totsuka, K., Kondo, N., & Okada, S. (2017) Measurement and visualization of face-to-face interaction among community-dwelling elderly persons using wearable sensors. Geriatrics & Gerontology International. 17, 1752-1758. DOI: 10.1111/ggi.12933
  • Masumoto, K., Taishi, N., Shiozaki, M. (2016) Age and gender differences in relationships among emotion regulation, mood, and mental health. Gerontology and Geriatric Medicine, 2, 1-8. Open Access
             

関連講義