オープンイノベーションによる脳科学の産業応用を推進「異分野の研究者・異業種の民間企業からなるコンソーシアム」

トップページ > アカデミー一覧 > 応用脳科学アカデミーアドバンスコース「五感・情動・記憶・意思決定・コミュニケーション」第5回(吉田先生・岡ノ谷先生・石津先生)

応用脳科学アカデミーアドバンスコース「五感・情動・記憶・意思決定・コミュニケーション」第5回(吉田先生・岡ノ谷先生・石津先生)

タイトル「知覚と行動と学習をつなぐ自由エネルギー原理」

講師紹介

吉田 正俊(よしだ まさとし)先生

  • 吉田先生 写真
    【現職】
      北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター 特任准教授
    【経歴】
    • 1995年 東京大学大学院薬学系研究科薬学専攻修士課程 修了
    • 1996年 科学技術振興事業団心表象プロジェクト 研究員
    • 2001年 文部省科学研究費(特別推進) 学術研究支援員
    • 2003年 学位取得:博士(医学)
    • 2003年 生理学研究所・認知行動発達研究部門 助手
    • 2006年 生理学研究所・認知行動発達研究部門 助教
    • 2020年 北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター 特任准教授(現在に至る)
  • 【研究概要】

    意識の謎を知りたいと思って研究してきました。我々の大脳の後頭部には、視覚に関わる脳部位(視覚野)があります。この部分が損傷した患者では「盲視」という能力を持っていることがあります。盲視では、視野の一部が欠けている(つまり意識経験がない)のにも関わらず、見えない場所にあるものに手を伸ばしたり、逆に避けたりすることができます。見えるという意識経験と視覚情報を使うことは必ずしも同じではないという証拠です。私はこの盲視の現象について動物モデルを対象とした研究を行い、視覚的意識と視覚的注意の関係について明らかにしてきました。近年ではそれらに加えて、小型霊長類であるマーモセットを対象として、統合失調症における意識経験の変容について明らかにすることを目指して研究を進めているところです。

  • 【主な業績】
      主要な学術論文
    • Tian X., Yoshida M., Hafed ZM. (2018) Dynamics of fixational eye position and microsaccades during spatial cueing: the case of express microsaccades. J Neurophysiol 2018 Feb 21. doi: 10.1152/jn.00752.2017.
    • Yoshida M., Hafed ZM. and Isa T. (2017). Informative Cues Facilitate Saccadic Localization in Blindsight Monkeys. Front. Syst. Neuroscience. 11:5. doi: 10.3389/fnsys.2017.00005.
    • Veale R., Hafed ZM. and Yoshida M. (2016). How is visual saliency computed in the brain? Insights from behaviour, neurobiology, and modeling. Phil Trans Roy Soc B 372(1714). pii: 20160113. doi: 10.1098/rstb.2016.0113
    • Yoshida M., Isa T. (2015) Signal detection analysis of blindsight in monkeys. Sci Rep 5:10755.

    • 主要な解説論文
    • 吉田正俊 (2018) 自由エネルギー原理と視覚的意識. 日本神経回路学会誌 25(3):53-70
    • 吉田正俊 (2014) サリエンシー・マップの視覚探索解析への応用. 日本神経回路学会誌 21(1): 3-12
    • 吉田正俊 (2014) 意識の神経相関. Clinical Neuroscience 32(8): 856-860

    • 主要な招待講演
    • Yoshida M. (2020) "Enactivism and free-energy principle" 国際ワークショップ Combining Information theoretic Perspectives on Agency (CIPA), 東京
    • 吉田正俊 (2019) 「自由エネルギー原理と視覚的意識」 第13回生物学基礎論研究会, 岡崎
    • 吉田正俊 (2018)「意識の神経相関」第27回日本意識障害学会, 大阪
    • 吉田正俊 (2018)「マイクロサッカード、視覚的注意、盲視」 日本視覚学会2018年冬季大会, 東京.

開催概要

講義内容
ベイズ的知覚観というものがあります。われわれ人間やその他の生き物は、たとえば網膜のようなセンサーに時々刻々と入力してくる観測データを元にして、それを生み出した外界の状態(たとえば太陽の高さ)という隠れ値を推定する、このように知覚を捉える立場です。われわれが外界の状態とセンサーの間の関係式(生成モデル)をあらかじめ学習しておけば、センサーのデータをもとにベイズの定理を使って外界の状態を確率的に推定することができるというわけです。ベイズ的知覚観をさらに行動と学習まで拡張したのが自由エネルギー原理です。われわれはつねに外界の状態についての予測を行っており、この予測が最適でありつづけるように、われわれの知覚と行動と学習は方向づけられているというのです。つまり、適応的な知覚、行動、学習はどれも、予測についての変分自由エネルギーが下がる方向への変化として統一的に説明できるというのです。この新しい考えはまだ実証されたとは言えない段階ではありますが、知覚、行動、学習、さらにいえば進化や他者とのコミュニケーションまでを包括する、スケールの大きい理論的枠組です。また、理論的には機械学習における変分自己符号化器(VAE)と等価であり、AIとの関連性からもたいへん興味深いものです。本講義では私が研究している視覚と眼球運動を例にとって、自由エネルギー原理についてなるたけ噛み砕いた説明を行う予定です。
日時
調整中
場所
調整中
お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。

タイトル「情動の脳内機構と行動制御」

講師紹介

岡ノ谷 一夫(おかのや かずお)先生

  • 岡ノ谷先生 写真
    【現職】
      東京大学 教養学部 生命・認知科学科 認知行動科学分科 教授
    【経歴】
    • 昭和58年3月 慶應義塾大学 文学部社会心理教育学科 卒業
    • 昭和58年8月 メリーランド大学大学院 心理学部 修士課程 入学
    • 平成元年4月 メリーランド大学大学院 心理学研究科 修了、Ph D.
    • 平成元年4月 日本学術振興会特別研究員(上智大学博士研究員)
    • 平成2年10月 科学技術庁科学技術特別研究員(農業研究センター客員研究員)
    • 平成5年10月 井上科学財団特別研究員(慶応義塾大学 心理学研究室 訪問研究員)
    • 平成6年3月 千葉大学 文学部 助教授・大学院 自然科学研究科 兼任助教授
    • 平成8年10月~平成17年3月 科学技術振興事業団・さきがけ21兼任(知と構成・情報と知・協調と制御各領域)
    • 平成16年4月~平成17年3月 理化学研究所 脳科学総合研究センター兼任
    • 平成17年4月~平成22年6月 理化学研究所 脳科学総合研究センター生物言語研究チームチームリーダー
    • 平成20年10月~平成26年3月 JST-ERATO岡ノ谷情動情報プロジェクト研究総括
    • 平成22年7月~現在 東京大学大学院総合文化研究科教授
    • 平成22年7月~現在理化学研究所非常勤チームリーダー
  • 【研究概要】

    従来、心理学の領域とされてきた情動の研究を、脳神経科学・心理学・言語学・情報学の融合科学として再定義し、あらたな情動モデルを構築することを目指している。この情動の生成・伝達メカニズムを科学的に解明することにより、情動情報のモデル化が可能となり、言語情報と合わせて情動情報が伝達可能なものとなれば、新たな社会的コミュニケーションツールの開発などにも貢献しうると考えられる。

  • 【主な業績】
    • (1) Kutsukake, N., Inada, M., Sakamoto, S. H., & Okanoya, K. (2019). Behavioural interference among eusocial naked mole rats during work. Journal of Ethology. doi:10.1007/s10164-018-0581-9
    • (2) Nakai, T., Rachman, L., Arias, P., Okanoya, K., & Aucouturier, J.-J. (2019). A language-familiarity effect on the recognition of computer-transformed vocal emotional cues. bioRxiv, 521641. doi:10.1101/521641
    • (3) Nakatani, H., Muto, S., Nonaka, Y., Nakai, T., Fujimura, T., & Okanoya, K. (2019). Respect and admiration differentially activate the anterior temporal lobe. Neuroscience Research, 144, 40-47. doi:10.1016/j.neures.2018.09.003
    • (4) Furutani, A., Mori, C., & Okanoya, K. (2018). Trill-calls in Java sparrows: Repetition rate determines the category of acoustically similar calls in different behavioral contexts. Behavioural Processes, 157, 68-72. doi:110.1016/j.beproc.2018.08.010
    • (5) Hessler, N. A., & Okanoya, K. (2018). Physiological identification of cortico-striatal projection neurons for song control in Bengalese finches. Behavioural Brain Research, 349(3), 37–34. doi:10.1016/j.bbr.2018.04.044

開催概要

講義内容

近年、情報科学の進歩により、テレビ会議や携帯電話の絵文字など、さまざまなコミュニケーションツールや手法が開発され、生活の利便性向上に寄与しています。その一方で、この利便性ゆえに個人間・集団間に深刻なコミュニケーション不全が起こるなど、対面会話が主たるコミュニケーション手段であった時代には見られなかった諸問題が発生しています。このことは、「怒り」「喜び」「悲しみ」「不安」といった心の状態を表す情動情報の伝達が不充分であることに起因しているものと考えられます。

本講義では、人間の情動がどのように発生し、それをどのように表現し、伝達することができるかについて解説します。さらに、非言語情報としての情動情報の現れ方を計測するなど、科学的に情動情報を取り扱うことから、将来的にどのような活用が可能かについても述べます。

日時
調整中
場所
調整中
お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。

タイトル「神経美学:美、芸術、感性の脳科学」

講師紹介

石津 智大(いしづ ともひろ)先生

  • 石津先生 写真
    【現職】
      関西大学 文学部 心理学専修 准教授
    【経歴】
    • 2003年 早稲田大学第一文学部心理学専修卒業
    • 2009年 慶應義塾大学社会学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学、同年9月博士号受領
    • 2009-2016年 ロンドン大学ユニバーシティカレッジ生命科学部 研究員
    • 2016-2018年 ウィーン大学心理学部 研究員・客員講師
    • 2018-2020年 ロンドン大学ユニバーシティカレッジ生命科学部 上級研究員
    • 2020-現在 京都大学オープンイノベーション機構 特任講師
    • 2020-現在 関西大学文学部心理学専修 准教授
  • 【研究概要】

    芸術的活動(作品の知覚、表現技法、価値づけ、芸術的創造性など)と認知プロセスとの関係、感性的な体験(美醜、感動、崇高など)と脳のはたらきとの関係を、実験心理学と認知神経科学の手法により研究しています。また、基礎的な感性科学の実社会への貢献・応用(アートによる高齢者施設のウェルネス改善、臨床応用など)について取り組んでいます。

  • 【主な業績】
    主な論文
    • Ishizu, T. (2019), Functional Neuroimaging in Empirical Aesthetics and Neuroaesthetics. In The Oxford Handbook of Empirical Aesthetics.
    • Gerger, G., Pelowski, M., & Ishizu, T. (2018). Does priming negative emotions really contribute to more positive aesthetic judgments? A comparative study of emotion priming paradigms using emotional faces versus emotional scenes and multiple negative emotions with fEMG. Emotion.
    • Ishizu, T., & Zeki, S. (2017). The experience of beauty derived from sorrow. Human Brain Mapping, 38(8), 4185-4200.
    • Ishizu, T., & Zeki, S. (2014). A neurobiological enquiry into the origins of our experience of the sublime and beautiful. Frontiers in human neuroscience, 8, 891.
    • Ishizu, T., & Zeki, S. (2014). Varieties of perceptual instability and their neural correlates. NeuroImage, 91, 203-209.
    • Ishizu, T., & Zeki, S. (2013). The brain's specialized systems for aesthetic and perceptual judgment. European Journal of Neuroscience, 37(9), 1413-1420.
    • Zeki, S., & Ishizu, T. (2013). The “Visual Shock” of Francis Bacon: an essay in neuroesthetics. Frontiers in human neuroscience, 7, 850.
    • Ishizu, T., & Zeki, S. (2011). Toward a brain-based theory of beauty. PloS one, 6(7), e21852.
    主な著作、編著作
    • 石津智大 『神経美学 ‐美と芸術の脳科学‐』 (2019年、共立出版)
    • Projecting Pentagonism: the aesthetic of Gerard Caris, Ishizu, T., McGown, K., Onians, J., Pooke, G. Sidney Cooper Gallery (2018) (エキシビションカタログ)

開催概要

講義内容

わたしたちの毎日を豊かに彩る感性と芸術。一見、脳科学とは遠くはなれた領域に思えますが、知覚の探求と精神のはたらきにかかわろうと試みている点では、脳科学とおなじ目的を共有し、深い関係性があると言えます。神経美学とは、認知神経科学の新しい一分野であり、脳のはたらきと美学的体験(美醜、感動、崇高など)との関係や、認知プロセスや脳機能と芸術的活動(作品の知覚・認知、創造性、美術批評など)との関係を研究する学問です。神経科学者や心理学者だけでなく、哲学者、芸術家、美術史学者などが参画する学際領域です。認知神経科学と心理学の観点から芸術的活動・創造性と感性的判断の仕組みを学ぶ一方、芸術の技法や感性的判断についての人文学的考察を利用してわたしたちの認知とこころのはたらき、さらにその背後にある脳機能への理解を深める。このような相補的なはたらきのある分野といえます。

本講義では、美醜などの感性的判断について神経美学の基本的な研究成果を概観したあと、単純な美を超えた複雑な感性体験、すなわち悲哀美や畏怖などの認知・脳機能を紹介します。また、感性と行動との関係、そして個と個を超えて感性的価値が社会で共有されるプロセスについて考え、これらを通して神経美学や感性科学の成果を実社会へ還元する視点を提供したいと思います。

日時
調整中
場所
調整中
お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。
ページトップへ