応用脳科学アカデミーベーシックコース3「ELSI」第2回(神里先生・岸本先生・江間先生)
タイトル「科学技術の社会的価値」
講師紹介
神里 達博(かみさと たつひろ)先生
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【現職】
千葉大学 大学院国際学術研究院/国際教養学部 教授
【経歴】
- 2008年1月 - 2012年3月 東京大学 大学院工学系研究科 特任准教授
- 2012年4月 - 2015年9月 大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター 特任准教授
- 2014年4月 - 現在 朝日新聞客員論説委員
- 2015年10月 - 2016年3月 千葉大学 高等教育研究機構 教授
- 2016年4月 - 現在 大阪大学 客員教授
- 2016年4月 - 現在 千葉大学 国際教養学部 教授
- 2020年4月 - 現在 千葉大学 大学院 国際学術研究院 教授、総合国際学位プログラム長
- 2020年10月 - 現在 日本学術会議 連携会員
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【研究概要】
専門分野は科学史、科学技術社会論、リスク論。社会のなかの科学技術をどう位置づけていくべきか、社会的、政治的、文化的、歴史的側面などから検討している。最近のおもな関心は、ITとBTの境界領域や、生態学の社会的意味、リスクコミュニケーション論など。またコロナ・パンデミック後の社会についても関心を持っている。博士(工学)。
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【主な業績】
『リスクの正体-不安の時代を生き抜くために』(岩波新書,2020)、『コロナ後の世界: いま、この地点から考える』(共著,筑摩書房,2020)、『ブロックチェーンという世界革命-価値観を根本から変えるテクノロジーの正体とは』(河出書房新社,2019)、『文明探偵の冒険-今は時代の節目なのか』(講談社現代新書,2015)、『没落する文明』(共著,集英社新書, 2012)、『食品リスク-BSEとモダニティ』(弘文堂,2005)ほか
開催概要
- 講義内容
- 科学技術が社会のあらゆる場面に浸潤し、さまざまな相互作用のもとにある現代は、もはや科学技術の「専門家」だけにその管理を任せておくことが難しい時代に入っているといえるだろう。具体的には、先端的な医療・生命科学や、人工知能や自動運転などを含む情報技術、またエネルギーや環境問題の領域などで、この傾向は顕著である。それは、新たな政治と科学の融合的問題域の出現を意味している。しかしながら、いわゆる「専門性の壁」はむしろ高くなっており、科学的知識や技術の価値的な側面について、専門家以外の人々も一緒に議論していくのは、必ずしも容易なことではない。このような状況を背景に、科学技術と社会のさまざまな相互作用について、社会的、法的、倫理的側面から検討するための活動、「ELSI」の重要性が増している。本講義では、このような考え方が生まれてきた歴史的経緯について確認した上で、私たちの社会が今後、適切に科学技術を発展させ、またマネジメントしていく上で、どのような考え方が重要になってくるか、概観してみたい。
- 日時
- 2021年8月6日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※神里先生の講義は、13:00~14:10です。
- 場所
- オンライン開催
- お問い合わせ先
- 本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。
タイトル「データサイエンスにおけるELSI」
講師紹介
岸本 充生(きしもと あつお)先生
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【現職】
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大阪大学データビリティフロンティア機構(IDS) ビッグデータ社会技術部門 教授
大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)センター長【経歴】
- 1998年 京都大学大学院経済学研究科後期博士課程修了
- 1993年 通産省工業技術院資源環境技術総合研究所安全工学部
- 2001年 独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター
- 2008年 独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門 研究グループ長
- 2014年 東京大学 公共政策大学院 & 政策ビジョン研究センター 特任教授
- 2017年 大阪大学データビリティフロンティア機構 ビッグデータ社会技術部門 教授
- 2020年 大阪大学社会技術共創研究センター センター長(兼任)
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【研究概要】
新規技術の研究開発から社会実装を進めるにあたって、現行の法規制、倫理規範、社会受容性との間にギャップ(指針の空白)が生まれ、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を生み出します。過去を振り返ってみると、ELSIへの対応を誤って様々な新規技術が事故や事件を起こしたり炎上したりしてイノベーションが阻害されてきました。
データビジネスは、研究開発から社会実装までの時間が短いことが特徴です。そのため上記のトラブルが生じるリスクが非常に高くなります。
私の専門分野はリスク学と言っています。もともと、化学物質や食品から事故や自然災害まであらゆるリスクを、リスク評価とリスク管理、そしてリスクガバナンスの観点から研究してきました。近年では研究対象を、新規技術(エマージングテクノロジー)、その中でも特にデータビジネスを取り上げています。
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【主な業績】
編著書に、「リスク学事典」(丸善書店)、「汚染とリスクを制御する (シリーズ 環境政策の新地平 第6巻) 」(岩波書店)、「基準値のからくり (ブルーバックス) 」(講談社)、「環境リスク評価論 」(大阪大学出版)など。
最近の論文には、
- トランプ政権における規制改革 ―規制影響分析(RIA)とレギュラトリーサイエンスの役割― 、季刊評価クォータリー 53 3 - 13 2020年4月
- 科学的知見と政策的対応の間のギャップを埋めるレギュラトリーサイエンス、セイフティ・エンジニアリング 195 4 - 9 2019年6月
- 環境規制における規制影響分析(RIA)の進展と課題:米国の石炭火力発電所規制を例に、環境情報科学 48(1) 49 - 54 2019年3月
- リスク学の発展と原子力技術の深い関係、日本原子力学会誌 61(3) 185 - 187 2019年3月
- 規制影響評価(RIA)の活用に向けて:国際的な動向と日本の現状と課題、経済系 : 関東学院大学経済経営学会研究論集 275 26 - 44 2018年11月
- エマージング・リスクの早期発見と対応-公共政策の観点から-、保険学雑誌 642 37 - 60 2018年9月
など。
開催概要
- 講義内容
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最初に、パーソナルデータに焦点を当てて、データの取得から、学習済みモデルの作成、モデルの適用に至るプロセス、また取得データの二次利用を行うにあたってあらかじめ対処が必要となる倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を検討します。
次に、パーソナルデータを利活用した公共政策やデータビジネスの具体的な事例をもとに、実際にどのようなELSIが問題となり、どのような対応がなされたのかを紹介します。
1つ目の事例としては、顔認識を中心とした生体認証技術を取り上げます。国内でもいくつか「炎上」事例がありますが、海外では警察活動、国境管理、学校安全などの文脈で応用例がある反面、反対運動も盛り上がっており、利用を禁止する条例ができたり、裁判が起こされたりしています。何が問題となっていて、どのように対処することが望ましいのかを示します。
2つ目の事例は、業界団体が自主的にガイドラインなどを策定して、ELSIに未然に対応した事例をとりあげます。うまく実施できた事例が国内でもいくつかあります。これらがどのようにして可能になったかを検証します。
これらの事例から分かることは、ELSIに対して、L(法規制)に遵守するだけでは不十分であり、E(倫理)やS(社会)の側面への対応が不可欠であることが分かります。しかし、EやSへの対応はマニュアル通りにやることは難しく、多様な視点やアプローチが必要となります。
- 日時
- 2021年8月6日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※岸本先生の講義は、14:20~15:30です。
- 場所
- オンライン開催
- お問い合わせ先
- 本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。
タイトル「人工知能と社会をめぐる課題にどう向き合うか」
講師紹介
江間 有沙(えま ありさ)先生
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【現職】
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東京大学 未来ビジョン研究センター 准教授
【経歴】
- 2012年 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
- 2012年 京都大学 白眉センター 特定助教
- 2015年 東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構
- 2017年 国立研究開発法人理化学研究所革新知能統合研究センター 客員研究員
- 2018年 東京大学 政策ビジョン研究センター 特任講師
- 2019年 東京大学 未来ビジョン研究センター 特任講師
- 2021年 東京大学 未来ビジョン研究センター 准教授
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【研究概要】
人工知能やロボットを含む情報技術と社会の関係について研究。
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【主な業績】
- 江間有沙、『絵と図でわかるAIと社会』、技術評論社、2021
- 江間有沙、工藤郁子、岡田陽介、徳田有美子、藤本敬介、「ディープラーニングの社会実装に向けて」、『ディープラーニングG検定公式テスト第2版』、株式会社翔泳社, 2021, pp.287-348.
- 松本敬史、江間有沙、AIサービスのリスク低減を検討するリスクチェーンモデルの提案、東京大学未来ビジョン研究センター政策提言、2020. https://ifi.u-tokyo.ac.jp/news/7036/
- 江間有沙、『AI社会の歩き方:人工知能とどう付き合うか』、株式会社化学同人、2019.
- 標葉靖子、福山佑樹、江間有沙、『残された酸素ボンベ:主体的・対話的で深い学びのための科学と社会をつなぐ推理ゲームの使い方』、ナカニシヤ出版、2020.
- 江間有沙「鏡としての人工知能」、東京大学教養学部(編)、『知のフィールドガイド 異なる声に耳を澄ませる』、白水社、2020、 21-34.
- 江間有沙、城山英明、「AIのガバナンス」稲葉振一郎他(編)、『人工知能と人間・社会』勁草書房、2020、297-344.
- 江間有沙,「第6章ロボットとの付き合い方を考える」,上出寛子・新井健生・福田敏男(編),『今日、僕の家にロボットが来た。 未来に安心をもたらすロボット幸学との出会い』, 北大路書房, 2019, pp.123-137.
- 江間有沙、工藤郁子、「ディープラーニングの応用に向けて(2)法律・倫理・現行の議論」、『ディープラーニングG検定公式テスト』、株式会社翔泳社, 2018, pp.277-320.
開催概要
- 講義内容
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近年、人工知能(AI)サービスや製品の社会実装が拡大する一方で、AIの信頼性に係る問題が発生しています。これに関しては国連をはじめとする国際機関のほか、各国政府、産業団体などが緩やかに連携して原則づくりやその実装に向けたベストプラクティスの共有を行っています。
また、AIを取り巻く問題は、システム開発、サービス提供者、ユーザなど多岐にわたっており、マルチステークホルダーでの議論を円滑に進めるための方法論や調査なども行われています。そこで本話題提供では、国内外のAIガバナンスに向けてどのような論点が重要になっているのかを具体的な事例をもとに紹介すると同時に、各アクターの多様な取り組みについて概説します。
- 日時
- 2021年8月6日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※江間先生の講義は、15:40~16:50です。
- 場所
- オンライン開催
- お問い合わせ先
- 本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。