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応用脳科学アカデミーアドバンスコース「五感・情動・記憶・意思決定・コミュニケーション」第7回(廣瀬先生・西本先生・定藤先生)

タイトル「脳と身体とVR2.0」

講師紹介

廣瀬 通孝(ひろせ みちたか)先生

  • 廣瀬先生 写真
    【現職】
    • 東京大学 名誉教授
    • 東京大学先端科学技術研究センター サービスVRプロジェクト プロジェクトリーダー(特任研究員)
    【経歴】
    • 1954年5月7日生まれ、神奈川県鎌倉市出身
    • 1982年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了 工学博士
    • 1982年 東京大学工学部産業機械工学科 専任講師
    • 1983年 東京大学工学部産業機械工学科 助教授
    • 1999年 東京大学大学院工学系研究科 教授、東京大学先端科学技術研究センター 教授
    • 2006年~2020年 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
    • 2018年~2020年 東京大学連携研究機構バーチャルリアリティ教育研究センター機構長
    • 2020年4月~現在 東京大学先端科学技術研究センター サービスVRプロジェクト プロジェクトリーダー(特任研究員)
  • 【研究概要】

    専門はシステム工学、ヒューマン・インタフェース、バーチャル・リアリティ。

  • 【主な業績】
    • 主な著書に「バーチャル・リアリティ」(産業図書)。総務省情報化月間推進会議議長表彰、東京テクノフォーラムゴールドメダル賞、大川出版賞、など受賞。
    • 日本バーチャルリアリティ学会会長、日本機械学会フェロー、産業技術総合研究所研究コーディネータ、情報通信研究機構プログラムコーディネータ等を歴任。

開催概要

講義内容

VR(バーチャル・リアリティ)とは、実際には存在しない世界を人工的に合成し、疑似体験することを可能ならしめる技術である。この技術が登場してすでに4半世紀がたち、社会のいろいろな場所に根をおろしつつある。この技術は感覚研究と不可分な関係にあり、感覚の理解がこの技術の今後の進展の鍵となっている。というのは、人が外界で感じるのは感覚を通してであって、世界を合成することは感覚信号を合成することに他ならないからである。

初期のVR技術といえば、やみくもに感覚信号を模擬する装置を作る試みが多く、費用対効果の面からもあまり洗練されたものではなかった。もっと効果的な方法論はないのか、というのが最近のVR研究の1つの方向となっている。

感覚には錯覚という現象があり、これを上手に利用することによっておどろくほど単純な仕掛けで実際とは異なる感覚を生成できることが知られている。錯覚という現象も単一の感覚内で起こるもの、複数の感覚にわたるものなど色々あるが、昨今、注目を集め始めたのが、後者すなわち感覚間相互作用(クロスモーダリティ)である。

VR技術にクロスモーダル概念を取り込むことによって、ある感覚の合成が他の感覚刺激にも使えることになり、先述の費用対効果の問題に加えて、これまではさまざまな技術的理由により人工的には合成不可能だった感覚も人工的に惹起できるようになる。たとえば、味覚などはその良い例で、こうした感覚についても、ディスプレイ開発の可能性がひらけてきたのである。

言うまでもないことであるが、感覚の生成はその受容器における情報処理のみならず、中枢での情報処理が重要な役割を占めている。そこに脳が介在することによって、錯覚現象などもひきおこされるのである。感覚が生成されると、そこに意味が付与され、最終的には感情や感性などという、より高次な機能へとつながっていく。

本講演では、VR研究における感覚ディスプレイ研究に焦点をあてつつ、最近のクロスモーダル技術の現状について紹介し、さらに感情の惹起のような高次な心理過程をどうとりあうかなど、さらに将来的な研究課題についても触れてみたいと思っている。

日時
2021年12月21日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※廣瀬先生の講義は、13:00~14:10です。
場所
NTTデータ経営研究所 セミナールーム

【入館方法】
JA共済ビルのエントランスフロアで受付を済ませてから、左側のエレベーターにて9階までお越しください。9階に着きましたら、片側のガラス越しに社名が掲示されています。そちら側よりご入室いただきますと、右側奥に応用脳科学アカデミー受付(臨時設置)がございます。

お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。

タイトル「ヒト脳における知覚・認知・情動情報表現」※オンライン講義

講師紹介

西本 伸志(にしもと しんじ)先生

  • 西本先生 写真
    【現職】
      大阪大学 大学院生命機能研究科 教授
      情報通信研究機構 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター 特別招へい研究員
    【経歴】
    • 2000年 大阪大学 基礎工学部 生物工学分野 飛び級中退
    • 2005年 大阪大学 大学院基礎工学研究科 博士後期課程修了
    • 2005年-2013年カリフォルニア大学バークレー校 ヘレン・ウィルス神経科学研究所
      博士研究員/アソシエート・スペシャリスト
    • 2013年-2021年情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 主任研究員
    • 2013年-2021年 大阪大学 大学院生命機能研究科 招へい准教授(後に招へい教授)
    • 2021年-現在 情報通信研究機構 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター 特別招へい研究員
    • 2021年-現在 大阪大学 大学院生命機能研究科 教授
  • 【研究概要】

    自然な知覚・認知条件下における脳活動を説明する予測モデルの構築を通じ、脳神経情報処理の定量的理解を進める。また、予測モデルを応用することで脳情報デコーディングのための基盤技術を開発する。

  • 【主な業績】
    • Nishimoto S, Vu AT, Naselaris T, Benjamini Y, Yu B, Gallant JL. Reconstructing visual experiences from brain activity evoked by natural movies. Current Biology 21(19): 1641-1646 (2011)
    • Huth AG, Nishimoto, S, Vu AT, Gallant JL. A continuous semantic space describes the representation of thousands of object and action categories across the human brain. Neuron 76(6): 1210-1224 (2012)
    • Çukur T, Nishimoto S, Huth AG, Gallant JL. Attention during natural vision warps semantic representation across the human brain. Nature Neuroscience 16(6): 763-770 (2013)
    • Nishida S., Nishimoto S. Decoding naturalistic experiences from human brain activity via distributed representations of words, NeuroImage 180:232-242 (2018)
    • Nakai T., Nishimoto S. Quantitative models reveal the organization of diverse cognitive functions in the brain. Nature Communications 11:1142 (2020)
    • Koide-Majima N, Nakai T, Nishimoto S. Distinct dimensions of emotion in the human brain and their representation on the cortical surface. Neuroimage. 222:117258 (2020)

開催概要

講義内容
私たちの生活は、外界から得られる多様で複雑な情報を処理し、客観的な認知や主観的な情動などを踏まえて行動を生み出す精緻な脳機能によって成立しています。近年の脳神経活動計測技術およびその解析技術の発展により、このような自然で複雑な日常を支える脳内情報表現を定量的に理解するための基盤が成立しつつあります。またこれらの発展の一部は、昨今の進展が著しい機械学習・人工知能技術の発展とも軌を一にしています。本講演では、私たちが進めている研究を中心に、日常を司る脳機能研究の進展やその応用可能性についてご紹介します。
日時
2021年12月21日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※西本先生の講義は、14:20~15:30です。
場所
NTTデータ経営研究所 セミナールーム

【入館方法】
JA共済ビルのエントランスフロアで受付を済ませてから、左側のエレベーターにて9階までお越しください。9階に着きましたら、片側のガラス越しに社名が掲示されています。そちら側よりご入室いただきますと、右側奥に応用脳科学アカデミー受付(臨時設置)がございます。

お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。

タイトル「脳科学から褒めの効果を考える」

講師紹介

定藤 規弘(さだとう のりひろ)先生

  • 定藤先生 写真
    【現職】
      大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所 システム脳科学研究領域 心理生理学研究部門 教授
    【経歴】
    • 1983年 京都大学医学部医学科卒業,医学博士
    • 1988年 - 1990年 米国NIH客員研究員
    • 1995年 - 1998年 福井医科大学高エネルギー医学研究センター講師
    • 1998 年 福井医科大学高エネルギー医学研究センター 助教授
    • 1999 年 - 現在 大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所(旧:岡崎国立共同研究機構生理学研究所) 教授
  • 【研究概要】

    発達期における社会能力の正常な獲得過程を実証的に解析するとともに、獲得過程における病態を明らかにすることを目的として研究を進めてきた。①まず乳幼児から学童にいたるまで、順序だてて出現する行動里標に注目し、発達過程で出現する社会能力の要素過程としての(1)自己認知1(2)生物学的動きに対する偏好(同種偏好)2(3)相互模倣3 (4)嘘4(5)皮肉5-7(6)道徳4 (7)共感8 (8)向社会行動9-11 の神経基盤をfMRIにより明らかにした。特に、ヒトの向社会行動の誘因の一つとして社会報酬について「他者からの良い評判の獲得」は金銭報酬獲得時と同様に報酬系を賦活させる」という仮説のもと実験を行ったところ、報酬系として知られる線条体の共通賦活を見出した。さらに、自己から他者への働きかけの結果としての他者の反応(社会的随伴性)も報酬となることを示した12,13。これらの結果は、相互予測性が社会性発達の駆動力となることを示している。②発達初期における対人関係における相互主体性の神経基盤を明らかにする目的で、複数個体での視線・行動計測法とhyperscanning fMRIの開発を進め、見つめ合いと共同注意、共同作業、相互模倣における神経活動の個体間同期現象を明らかにした14-18

  • 【主な業績】
    1. Morita, T. et al. The anterior insular and anterior cingulate cortices in emotional processing for self-face recognition. Soc. Cogn. Affect. Neurosci. 9, 570–579 (2014).
    2. Morito, Y., Tanabe, H. C. C., Kochiyama, T. & Sadato, N. Neural representation of animacy in the early visual areas: A functional MRI study. Brain Res. Bull. 79, 271–280 (2009).
    3. Miyata, K. et al. Neural substrates for sharing intention in action during face-to-face imitation. Neuroimage 233, 117916 (2021).
    4. Harada, T. et al. Neural correlates of the judgment of lying: A functional magnetic resonance imaging study. Neurosci. Res. 63, (2009).
    5. Uchiyama, H. et al. Neural substrates of sarcasm: A functional magnetic-resonance imaging study. Brain Res. 1124, (2006).
    6. Uchiyama, H. T. et al. Distinction between the literal and intended meanings of sentences : A functional magnetic resonance imaging study of metaphor and sarcasm. CORTEX 48, 563–583 (2011).
    7. Matsui, T. et al. The role of prosody and context in sarcasm comprehension: Behavioral and fMRI evidence. Neuropsychologia 87, 74–84 (2016).
    8. Takahashi, H. K. et al. Brain networks of affective mentalizing revealed by the tear effect: The integrative role of the medial prefrontal cortex and precuneus. Neurosci. Res. 101, 32–43 (2015).
    9. Izuma, K., Saito, D. N. & Sadato, N. Processing of Social and Monetary Rewards in the Human Striatum. Neuron 58, 284–294 (2008).
    10. Izuma, K., Saito, D. N. & Sadato, N. Processing of the incentive for social approval in the ventral striatum during charitable donation. J. Cogn. Neurosci. 22, 621–631 (2010).
    11. Izuma, K., Saito, D. N. & Sadato, N. The roles of the medial prefrontal cortex and striatum in reputation processing. Soc. Neurosci. 5, 133–147 (2010).
    12. Sumiya, M., Koike, T., Okazaki, S., Kitada, R. & Sadato, N. Brain networks of social action-outcome contingency: The role of the ventral striatum in integrating signals from the sensory cortex and medial prefrontal cortex. Neurosci. Res. 123, 43–54 (2017).
    13. Sumiya, M. et al. Attenuated activation of the anterior rostral medial prefrontal cortex on self- relevant social reward processing in individuals with autism spectrum disorder. NeuroImage Clin. 26, 102249 (2020).
    14. Saito, D. N. et al. “Stay Tuned”: Inter-Individual Neural Synchronization During Mutual Gaze and Joint Attention. Front. Integr. Neurosci. 4, 1–12 (2010).
    15. Tanabe, H. C. et al. Hard to “tune in”: neural mechanisms of live face-to-face interaction with high-functioning autistic spectrum disorder. Front. Hum. Neurosci. 6, 1–15 (2012).
    16. Koike, T. et al. Neural substrates of shared attention as social memory: A hyperscanning functional magnetic resonance imaging study. Neuroimage 125, 401–412 (2016).
    17. Koike, T., Sumiya, M., Nakagawa, E., Okazaki, S. & Sadato, N. What Makes Eye Contact Special? Neural Substrates of On-Line Mutual Eye-Gaze: A Hyperscanning fMRI Study. Eneuro 6, ENEURO.0284-18.2019 (2019).
    18. Koike, T. et al. Role of the right anterior insular cortex in joint attention-related identification with a partner. SCAN 14, 1131–1145 (2019).

開催概要

講義内容

脳科学から褒めの効果を考える

ヒトの社会は、血のつながらないヒトとヒトとの間の役割分担で成り立っています。ここで大切なのは、他人のためにみずから行動すること(向社会行動)です。この向社会行動が起こる理由のひとつとして、他人に「ほめられる」ことがあります。「ほめられること」は他人からのポジティブな評価であって「社会的な承認」です。「ほめ」を脳内で処理するときには、「報酬系」(お金をもらったときなどのように、心地よい気持ちを引き起こす神経回路)と、他人の心を推測するときのしくみの、両方が関連していることがわかりました。つまり、お金をもらったときも、他人にほめられたときも、同じような報酬系という脳の活動が起こる一方、褒められたことを理解するためには、他人の意図を正確につかむという社会能力が必要であるのです。他人に「ほめられること」は、私たちが育ち、学び、幸福に生きていくために、どのような効果があるのでしょうか。  神経科学と人文科学をつなぐ架け橋となる「脳機能イメージング」の研究を中心に、情緒との関係で説明したいと思います。

日時
2021年12月21日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※定藤先生の講義は、15:40~16:50です。
場所
NTTデータ経営研究所 セミナールーム

【入館方法】
JA共済ビルのエントランスフロアで受付を済ませてから、左側のエレベーターにて9階までお越しください。9階に着きましたら、片側のガラス越しに社名が掲示されています。そちら側よりご入室いただきますと、右側奥に応用脳科学アカデミー受付(臨時設置)がございます。

お問い合わせ先
本アカデミーに関するご質問等は、応用脳科学コンソーシアム事務局ホームページの ▶ お問い合わせフォームより、お問い合わせください。
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