FY2026応用脳科学コンソーシアム年次総会記念フォーラム  開催レポート速報

FY2026応用脳科学コンソーシアム年次総会記念フォーラム
脳科学とAIの融合~脳型AI研究開発の意義と将来像~

【開催レポート速報】

本フォーラムは、生成AI全盛時代ゆえに求められる脳情報を活用した脳型AIの重要性、必要性を広く、CAN会員をはじめ、多くの方にご理解いただくことを目的に実施いたしました。

当日は台風の真っただ中にもかかわらず、会場、オンラインを含め、300名を超える方々にご参加いただきました。また、フォーラム後の懇親会でも、最後まで多くの方が残られ活発な意見交換が行われました。(内訳は、約50%が企業の方、約35%がアカデミアでした。)

基調講演では、現在、CANが脳科学研究者や会員企業の皆さんと取り組んでいる脳型AIの研究開発において全体アドバイザーとしてご参加いただいている西本先生にAIと脳の違いや融合の可能性についてお話をいただきました。

その後、内閣府、文科省、経産省、総務省から各省で取り組んでいる最新のAI政策、脳科学政策についてご説明をいただきました。

  

<ご登壇者>

開会挨拶・導入講演: 「脳の省エネ性能と瞬時の意思決定」

柳田 敏雄 氏
CAN代表理事・会長 国立研究開発法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター アドバイザー(前研究センター長)

基調講演: 「脳科学とAIの融合:情動・言語・認知とその先」

西本 伸志 氏
大阪大学 大学院生命機能研究科 教授
国立研究開発法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所
脳情報通信融合研究センター 上席研究員

<話題提供>

「日本のAI政策の最新動向」

佐藤 貴幸氏 
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 人工知能政策推進室 企画官

「文部科学省における脳神経科学研究関連の取組について」

倉田 佳奈江氏
文部科学省 研究振興局 ライフサイエンス課長 

「経済産業省におけるブレイン・ニューロテック関連の取り組み」

武田 伸二郎氏
経済産業省 イノベーション・環境局 イノベーション政策課長/量子産業室長

「総務省における脳情報通信に関する取組」

大野 誠司氏
総務省 国際戦略局 技術政策課 研究推進室長 

~~ 開催概要 ~~

【開会挨拶・導入講演】

冒頭、CAN代表理事・理事長の岩本敏男よりアカデミアと産業界を結ぶCANの役割の重要性を述べ、「脳科学とAIの融合の先に何があるか」を参加者とともに考えたいと期待を語りました。

続いて、CAN代表理事・会長の柳田敏雄が、開会挨拶を兼ね導入講演として、「脳の省エネ性能と瞬時の意思決定」について講演しました。

今のAIは膨大なデータとエネルギーを基に成り立っており、わずか20Wで動き、少ない情報で意思決定できる人間の脳とは大きく異なります。この脳の省エネ性能と瞬時に意思決定できる能力について、分子生物学の観点からお話をいただきました。脳科学とAIの融合、そして脳型AIの可能性を感じさせるたいへん興味深い解説でした。

受講者からも、直後のアンケートで、脳とコンピュータの違いがはっきりわかった、情報処理エネルギーという観点から脳とAIを比較するのが興味深い、等々、脳情報科学の重要性を感じさせる多くのご感想をいただきました。

CAN 岩本
CAN 柳田

【基調講演】

脳科学とAIの融合:情動・言語・認知とその先」
西本 伸志 氏 大阪大学 大学院生命機能研究科 教授、国立研究開発法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 上席研究員

CiNet 西本先生

続く基調講演では、CANで数年間にわたり取り組んでいる脳モデル開発ユニットにおける脳型AIの研究開発の全体アドバイザーでもある西本伸志先生にお話をいただきました。西本先生は、fMRIを利用した脳情報科学を基に、環境に対する脳反応を計測し、そのデータを基に脳が、環境をどう認知し、どういう情動反応をしているかを言語化する研究などを行なっています。この研究開発を基にNTTデータグループはマーケティング分野等での人の感情を予測するAIシステムを構築し、実際のビジネスに活用しています。これは、脳科学の産業応用という点で、まさに、基礎研究から応用開発、そして社会実装までを実現した先駆的な事例です。

講演では、この脳科学と最近進歩の著しいLMM等のAIとの比較を通して、情動、言語、そして認知の脳内表現についてお話をいただきました。特に、認知については、ヒトの体験というものが受動的知覚と能動的認知の複合によって成立しているということを、実際の実験結果や脳内認知空間をもとにたいへんわかりやすく解説していただきました。

アンケートでも、わかりやすかった、脳とAIの関連が明らかになっていることがわかり良かった、先進的な研究を紹介してもらいとても刺激を受けた、多くの示唆があった、等々、たいへん多くの反響をいただきました。

【話題提供】

続いて、脳神経科学・AIに関わる国の取組について、関係各省庁より話題提供が行われました。


内閣府の佐藤貴幸企画官からは、「日本のAI政策の最新動向」と題し、「イノベーションの促進とリスク対応の両立」を図るAI法を軸とした日本独自の政策体系について、さらに各省庁が連携しスピーディに議論していけるような仕組みを構築し、AI基本計画、「信頼できるAI」(日本の価値観・倫理観・文化等を反映したLLM)の考え方、長期的な取組みとしてムーンショット型研究開発におけるBMI、ロボティクス等に領域特化したフィジカルAIへの重点化、規制改革やAIの安全性確保に向けた政府対応など、日本のAI政策の全体像についてお話をいただきました。

続けて、文科省の倉田課長からは、「文部科学省における脳神経科学研究関連の取組について」と題し、AMEDと連携した脳神経科学統合プログラムについて、特に、AI時代を見据えた「デジタル脳」の再定義と取組みについてご説明いただきました。さらに、ムーンショット事業、経済安全保障にかかわるKプログラムにおける取組み、そして、AI for ScienceにおけるAIの活用に関する取り組み、さらに産学連携の促進などについてご紹介いただきました。

経産省の武田伸二郎課長からは、「経済産業省におけるブレイン・ニューロテック関連の取り組み」についてお話をいただきました。日本の次なる産業の種を探索・育成する「フロンティア領域」の重点分野として、ブレイン・ニューロテックを選定。非侵襲計測(センシング)の高度化、ニューロモデュレーション、ニューロフィードバック等、さらに、神経オルガノイドやニューロコンピューティング等の脳を模倣するシステムなど、社会実装に向けた取組みを行なっていくフェーズに入っていることをご説明いただきました。

最後に総務省の大野誠司室長から「総務省における脳情報通信に関する取組」と題し、情報通信研究機構・脳情報通信融合研究センターを中心とした脳情報通信の取組に対してどのような支援を行なっているかという観点から、総務省のお取組みについてお話をいただきました。特に、脳データを取得するための計測基盤、取得したデータを活用するためのデータ活用基盤の強化に力を入れ支援しているとのお話がございました。

アンケートでは、省庁の方々からのご説明について、国の政策が良くわかり参考になった、日本の強みなどを整理でき良かった、もっと詳しく聞きたかった、等、総じて、脳科学とAIに関する関心の高さが示唆されていました。

内閣府 佐藤様
文科省 倉田様
経産省 武田様
総務省 大野様

【関連施策の紹介】

CAN脳モデル開発ユニットの成果と展望
CAN事務局

CAN事務局より、CANのAI×脳科学の捉え方と2026年度の活動方針が報告されました。フィジカルAIのさらに先にある「人が世界や自分の身体をどう捉え、どう意思決定するか」という内部モデルの理解とAIへの実装、そしてその鍵となるニューロテックの重要性を示したうえで、2026年度の枠組み(応用脳科学アカデミー/SIG・研究会/脳モデル開発ユニット)を紹介しました。アカデミーはCiNet特別コース、新設のAIST特別コース、協賛会員によるテクニカルコースの拡充により約120講座規模へ拡大する予定です。脳モデル開発ユニットでは、第一期の取り組みにおいてfMRIを用いたクロスモーダル(空間・視触覚・視嗅覚など)な感性価値予測モデルを構築し、脳の情報を介したエンコード/デコードモデルが、とくに高次の感性表現で高い予測精度を示すことが確認されたことを紹介しました。第二期は空間感性価値を起点に、個人差を組み込んだモデル構築などを進めています。あわせて、約5万人規模の人間情報データベース等を活用してバーチャル顧客の検証基盤を目指す「Human Insight Agent for Marketing研究会」を2026年度の新たな取り組み事例として紹介し、応用脳科学資格検定試験を本年11月に実施予定であることを案内しました。

閉会にあたっては、CAN理事・事務局長の萩原より、西本先生の基調講演から得られた三つの示唆――(1)賢いAIほど人間に似てくることは、裏を返せば人間がなお優れている領域があること、(2)脳の後方(感覚野)は個人間で似る一方、前頭部(感性・意思決定に関わる領域)には個人差が大きく、現状のAIでそのまま再現するには限界があること、(3)人間は体験を多元的に扱っていること――を挙げ、これらがCANの取組と深く結びついていると述べました。そのうえで、「わずかな差、微妙な違い」をしっかりとモノづくり、サービスづくりに展開していく日本企業の強みをさらに強固なものにしていくためには、AIだけではなく脳科学が不可欠であり、人間のリアルなデータに基づくエージェント(Human Insight Agent)の構築を、参加企業とともに進めていきたいと締めくくりました。

CAN 磯村
CAN 萩原

【懇親会】

フォーラム終了後は会場を移し、懇親会を開催いたしました。懇親会会場には、初めての試みとして、CAN2026の応用脳科学アカデミー、SIG(Special Interest Group)、R&D研究会、脳モデル開発ユニットなどの活動紹介のパネルを展示しました。CAN会員の方はもちろん、省庁の方、アカデミアの方も含め多くの方にお立ち寄りいただき、その場で色々と意見交換をさせていただく良い機会となりました。

懇親会には数十名の方が参加されましたが、最後まで登壇者と参加者の間で、脳科学とAIの融合研究・社会実装の可能性をめぐる活発な意見交換が行われました。

懇親会場の様子
懇親会場の様子

【お知らせ】

CAN2026での様々な取り組みは、CAN会員になっていただくことで参加可能になります。入会に関する詳細はホームページに掲載しておりますので、こちらからご覧ください。

CAN入会について:https://www.can-neuro.org/2026_joincan/

脳モデル開発ユニット、R&D研究会、SIG、応用脳科学アカデミーについて説明をご希望の方は、ご遠慮なく、事務局にお問い合わせください。

また、11月25日(水)~27日(金)には、応用脳科学資格検定制度の資格検定試験(CBT)を実施します。応用脳科学アカデミーの講義を受講されているCAN会員の皆さんはもちろん、非会員の方も受験できますので、ぜひ挑戦してください!

様々な業種、部門の企業社員の方、学生、教員、等、幅広くいろいろな方が受験し、合格されています。
合格すると、「応用脳科学プラクティショナー」の称号が授与されます。

詳細はこちらからご覧ください: https://www.can-neuro.org/certification/

お問い合わせ先:CAN事務局 can@can-neuro.org