プレスリリース(2022.05.12)

脳科学の産業応用に向け、新たな取り組みをスタート
~Well-beingやVR/メタバース、AIによる創造性支援等を新たなテーマに設定~

このたび、一般社団法人応用脳科学コンソーシアム(所在地:東京都千代田区 代表理事:柳田 敏雄/岩本 敏男 以下、CAN)は、5月11日(水)に開催された2022年度のキックオフシンポジウムにて、脳科学の産業応用に関する今年度の新たな取り組みを発表しましたので、お知らせします。

  • 新しい4つのプラットフォームの開始
  • 2つの研究会の開催

これらの取り組みを通して、脳の健康、脳の創造力をパワーアップし、ビジネスパーソンが自らの仕事において、脳を知り、脳に聞き、脳を満足させる取り組みが可能になるよう支援を行うことで、CANでは脳科学の産業応用をますます加速させてまいります。

【開始する4つのプラットフォーム】

Neuro Startup-topia

日本経済新聞(2022.1.5付け)によれば、ブレインテックの市場規模は2024年には約5兆円の市場に成長するといいます。また、Neurotech AnalysisがまとめたNeurotech Landscape Overview2020レポートによれば、世界のニューロテックスタートアップTOP200の大半は米国であり、米国の121社に対して日本はわずか1社と言われています。
日本には脳科学分野において優秀な若手研究者多数いるにもかかわらず、自ら事業化に取り組むためのハードルが高いといった現状を鑑み、このたびブレインテックの産業化をミッションにしたブレインテックコンソーシアム(代表理事:藤井 直敬)と共同で、「Brain-Tech & Applied Neuroscience Start-up Encouragement Network(BASE Net)」を設置。BASE ハッカソンを開催し、スタートアップを目指す若手研究者の支援に取り組みます。

Brain Childcare-topia

玉川大学脳科学研究所の赤ちゃんラボと国立大学法人浜松医科大学/子どものこころの発達研究センターと連携し、主に子育て中のビジネスパーソンやその支援をしている方々を対象に、第一線で活躍されている講師陣が子育てに役立つ知識を通勤時間帯に視聴できるように、1講義10~20分程度の動画をコンパクトにまとめて提供します(無料)。

Daily Lifelog Info-topia

日常生活下での心理的ストレスや疲労状態を心理データ、生理データ、行動データ等として計測するともに、その低減に向けた介入方法の定量的効果測定を実施するためのプラットフォームを構築。CAN主催で実施される研究会や会員等で活用できるようにします(有料)。

Neuro Info-topia

CANで配信する脳科学関連(研究、テクノロジー、サービス等)のニュース、CANアカデミー講師を中心とした国内脳科学関連の研究機関や研究者の情報等を一元管理できるようにし、CANのホームページから検索可能にします(無料)。

【新たに開催する2つの研究会】

Well-living for Well-being研究会

Well-beingに対する社会的ニーズの急速な高まりとデジタルヘルス技術開発の加速と市場拡大がグローバルに進展しています。また、ISO規格として「健康経営・Well-being Management System Standard」の制定に向けた活動が行われています。この健康経営で着目されているアブセンティーズム・プレゼンティーズム等の主要要因は脳機能と密接に関連していることに加え、新型コロナ禍が継続的に続く中、日常生活の変化によるストレス増加、治療後に生じているブレインフォグやロングコビッド症候群等、脳の健康を脅かす環境が増加しています。このような背景のもと、唯一の情報処理臓器とも言われる脳の機能に着目し、脳科学、心理学等の研究者と「脳の健康」に関心の高い会員企業が共同で、世界に遅れることなく技術開発を促進し社会実装を目指す研究会を組成します。具体的には、世界的および日本でも約20%の人が有病者とも言われる慢性疼痛について、Oxford大研究者や国内研究者、そして会員企業と共同で低減システムの研究開発を行う予定です。また、ポジティブサイコロジーを利用したストレス緩和手法、脳波計を使わないα波変動検知によるストレス計測手法等の研究開発等を実施する予定です。

脳から考える次世代情報空間研究会

VR、メタバースは世界中で多額の投資を集め、開発競争が過熱しています。とりわけメタバース・バブルの発生で、マネーロンダリング、SEX産業等が出現して一部無法地帯化しているともいわれています。その一方で、ビジネスにおける有効性・課題および活用の在り方について、これらの技術が人間の認知・意思決定・生理状態等に与えるポジティブ、ネガティブな影響等を考慮したうえで検討できているとは言い難い状況です。そこで、本研究会では、脳科学、心理学、VR研究者等と会員企業が共同で、人間の認知・意思決定・生理状態等の知見に基づいた、人間のポジティブ状態のエンハンスメント、ネガティブ状態のリリースに活用する情報空間であり、現実空間における一人ひとりの人間のWell-beingの向上に資する次世代の情報空間環境、そしてビジネスの創出を目指します。

【その他:応用脳科学アカデミーについて】

応用脳科学アカデミーは、昨年度から講義数が昨年度比約1.5倍、計93講義と非常に充実したコースとなっています。とりわけ、アドバンスコース4「脳に学ぶAI」では、今年度ノーベル賞候補にも挙がっている「フリストンの自由エネルギー原理」について第一線で活躍されている研究者の講義をラインナップしています。

応用脳科学アカデミーのコースご紹介

  1. ベーシックコース1「応用脳科学の基礎」~脳科学をビジネスに応用するために必要な基礎的な知見を習得:
    脳の基礎研究の成果を研究開発や事業開発に新たに取り入れようとしている実務者にとって、脳科学やその周辺領域及び脳神経倫理の基礎知識を体系的に学ぶことができる、「応用脳科学アカデミー」に参加される皆様に受講を推奨しているコース
  2. ベーシックコース2「人間計測の基礎」~人間を計測する際に必要な基礎的な知見を習得:
    ヒトの脳や生理指標をビジネスに活用する際に必要な実験のデザイン方法、測定方法、データの統計解析および解釈方法など、より実践的な知識を習得するコース
  3. ベーシックコース3「ELSI(倫理的・法的・社会的課題」~脳科学やAIにおけるELSI (倫理的・法的・社会的課題)対応について習得:
    人間を扱う先端科学技術開発において必須であるELSI(倫理的・法的・社会的課題)対応について様々な角度からその概要、動向等を理解し、知見を広げるコース
  4. アドバンスコース1「脳と健康」~脳と情報技術から考えるWell-being:
    社会的にも大きな課題となっている脳の健康について、脳を、情報をインプットし、情報をアウトプットする唯一の臓器としてとらえ、ブレインヘルスケア、精神疾患、脳疾患やその治療方法としてのニューロフィードバック、脳刺激法、マインドフルネス等、幅広くWell-beingという観点から脳を学ぶコース
  5. アドバンスコース2「脳を育む」~赤ちゃんからビジネスパーソンまで人間の能力を活かす:
    脳は遺伝的、環境的影響を大きく受け成長、変化していく。大きく、乳幼児・児童・子どもの脳の成長を学ぶ講義と企業の健康経営、人材育成の視点から創造性、心理特性など組織やビジネスパーソンに求められる脳に関連する知識を学ぶコース
  6. アドバンスコース3「脳を知り脳に聞く」~マーケティング、R&Dに役立つ人間と脳の知識:
    五感やクロスモーダル感性価値、記憶、意思決定、快・不快、意識・無意識など、企業のマーケティングや研究開発に必要な脳科学、心理学、行動科学等、様々な研究分野の知見を学習するコース
  7. アドバンスコース4「脳に学ぶAI」~これからのAI開発に必要となる脳科学やAIの知識:
    脳科学とAIの融合による脳型AIをはじめ、科学、工学の両面から最先端の神経回路研究、人工知能研究の現状と方向性を理解するコース。今年度は、特にノーベル賞候補にも挙がっている「フリストンの自由エネルギー原理」について第一線で活躍されている研究者の講義をラインナップ
  8. 特別コース1「CiNetコース」:
    脳情報通信研究拠点として最先端の研究活動を行なっている情報通信研究機構(NICT)・脳情報通信融合研究センター(CiNet)で行われている人間の脳に関する様々な研究について学ぶコース
  9. 特別コース2「玉川大学コース」:
    第一線で活躍されている玉川大学・脳科学研究所の研究者が取り組んでいる「脳内表現から読み解く行動の理解」について学ぶコース

問合せ先:

一般社団法人応用脳科学コンソーシアム
東京都千代田区平河町 2-7-9  JA共済ビル10階
CAN事務局
E-mail :can@can-neuro.org