2025CANキックオフシンポジウムのご案内と神経オルガノイド解説第三回「神経オルガノイドが切り拓く創薬・医療の新次元」
前回までのメールマガジンで、(神経)オルガノイドの基礎と、その爆発的な研究・産業応用の広がりについてご紹介しました。今回は、この技術が創薬・医療にもたらす革新的なインパクトについてご紹介します。
https://www.can-neuro.org/news/whatisbrainorganoid_1/
https://www.can-neuro.org/news/whatisbrainorganoid_2/
神経領域の創薬には一製品あたり数千億円かかると言われています。一方で、臨床試験から承認までの成功率は他の疾患領域の半分以下であることが報告されています。この「開発の壁」を打ち破るゲームチェンジャーとして、神経オルガノイドが急速に台頭しています。最大の理由として、創薬にかかる金銭的/時間的コストを大幅に削減できる可能性があるからです。例えば、オランダのHUB organoidsは、癌領域でのオルガノイド研究に基づき、医薬品開発にかかる期間を従来の10~15年から約5年に短縮できる可能性を主張しています。
これまで、動物実験で有効かつ安全とされた薬剤でも、ヒトでの有効性や安全性の問題などで承認に至らないケースが多くありました。一方でヒト由来のオルガノイドであれば種間差の影響を最小化した状態で研究を行うことができるため、有効性や安全性の評価効率と精度の向上や、研究開発コストの削減が期待されています。
また、近年では動物実験の倫理的側面も問題とされており、欧米の規制当局を中心に動物実験の代替となる研究方法が推奨されるようになっています。米国食品薬品局(FDA)は先月、抗体医薬品の医薬品開発における動物実験要件の段階的廃止計画を発表しました。そこで示されている「動物を実験に供さない新たな方法」として、人工知能によるシミュレーションとヒト細胞由来のオルガノイドの活用が挙げられています。
こういった背景から、神経オルガノイドは創薬・医療研究のあり方を変えるゲームチェンジャーとして期待されており、本連載第二回でも述べた通り、大手製薬企業から新興バイオテック企業まで多くの企業がこの技術に投資を始めています。
本連載最終回となる次回は、今回のキックオフシンポジウムの主題ともなる、AIとの融合可能性について探ります。
5月20日(火)開催のキックオフシンポジウムでは、世界的に注目されている神経オルガノイド分野と計算論的神経科学分野を牽引する先生方が一堂に会し基調講演およびパネル討論頂きます。
https://www.can-neuro.org/news/can2025_kickoff_announcement/
シンポジウムの参加費は無料です(懇親会のご参加は4,000円)。是非下記リンクからお申し込みください。脳科学の新たな地平線、ぜひ一緒に覗いてみましょう!