1. HOME
  2. お知らせ
  3. 【事務局長のつぶやき】脳×AI・脳モデル

NEWS

お知らせ

【事務局長のつぶやき】脳×AI・脳モデル

応用脳科学アカデミーアドバンスコース4「脳に学ぶAI」で脳神経回路のモデル化を中心に藤田医科大・吉本先生、理研・豊泉先生、NCNP(国立精神・神経医療研究センター)・山下先生の3人にご登壇頂きました。このテーマでの講義は今期4回目です。

当日のシラバスはこちら⇒ https://www.can-neuro.org/2023_advance_syllabus/#a4_4

吉本先生は「学習理論から迫る脳の意思決定と情動」というタイトルでお話を頂きました。前半では機械学習概論から脳の意思決定と強化学習モデル等についてお話を頂きまました。後半で、吉本先生が広大や量研機構と共同で行っている機械学習法を用いたうつ病回路バイオマーカ開発に関する取組みについてご紹介頂きました。うつ病回路バイオマーカ開発のお話では、まだまだ課題もありますが、ビッグデータやAIを活用した定量的データ解析によって見えていない部分がわかるようになってきているというお話で、少しずつかもしれませんが、これからの応用研究開発の形が見えてきているのではないでしょうか。
皆さんご存じのとおり、脳は意思決定に際し、無意識に複数の選択肢から脳にとって最適と考えられるものを選択しているのですが、そこには大きく報酬が関わっています。ただし、一言で報酬と言っても、報酬によって得られる価値というのはそんなに単純ではなく、時間によって、身体内外の環境条件によって報酬の種類、価値も大きく影響を受けるため、そのモデルは複雑です。環境要因の重みづけ、時間関数(今の価値、将来の価値等)などを、組み入れ不要な要素、時間を省き、いかに上手に可能な限りシンプルにしてモデル化するかが重要ではないでしょうか。

吉本 潤一郎先生の講義概要はこちら⇒ https://www.can-neuro.org/2023/a4_4_1_lecturer/

続いてお話頂いた豊泉先生のテーマは「Modeling Learning in the brain」。脳内のニューロンレベルでの信号処理に関するモデル研究についてお話を頂きました。豐泉先生は元々物理学のご出身ということもあり、いかに理論的に脳の仕組みを解明するかというご関心から研究を続けていらっしゃるということでした。そういう意味で、脳の大元であるニューロンの挙動を理論的に解明するという微視的な視点から脳のモデル化についてのお話でしたが、これがまた大変面白いお話で、有名なヘブ則の話から今年発表された睡眠中の学習理論の話(ヘブ則を理論的に解明する研究につながる?)までたいへん多岐にわたり、興味深いお話でした。おそらく、この理論をさらに掘り下げ、より大きな枠組みでモデル化できるように確立していくと、新たな記憶素子や脳型コンピュータの開発につながっていくのではないでしょうか。

豊泉 太郎先生の講義概要はこちら⇒ https://www.can-neuro.org/2023/a4_4_2_lecturer/

最後にNCNPの山下先生がお話されたのは「計算論的精神医学入門」でした。まず、精神医学の難しさに関するお話は、すごく納得、実感できるお話でした。その課題を解決するためのアプローチとしてのデータ駆動型アプローチと理論駆動型アプローチのお話、さらにそれぞれの課題についての説明、そして二つのアプローチの融合に向けた取組みまで、たいへん興味深いお話でした。
それで終わりではありません。さらに神経ロボティクスを用いた損傷シミュレーションについて統合失調症や自閉症スペクトラムのモデル化、そのモデルから感覚精度の変調が引き起こす問題等についても説明して下さいました。

山下 祐一先生の講義概要はこちら⇒ https://www.can-neuro.org/2023/a4_4_3_lecturer/

まず、吉本先生が機械学習理論から入り、脳の学習、意思決定(どういう行動を引き起こすか)についてどうモデル化するかのお話、さらにデータ駆動型研究による障害(うつ病)研究について、次に豊泉先生はその大元となるニューロンの挙動をどうモデル化するかという理論駆動型アプローチ、そして最後に山下先生がデータ駆動型と理論駆動型の融合についてのお話と3つの講義をしっかり聞くと脳のモデル化については大まかに理解できるように、そして、3人の先生方のお取組みの融合が、これからの脳型AIの開発につながるように感じました。
「感じました」というのは、恥ずかしながら、素人の私の知識が追随できていない部分が随所にあり、「何となくそう感じる」という域を出られていないからなのですが😢(悲)。

しかし、ラップアップミーティングでの3人の先生方のお話から、日本が、これから情報産業としてAIの研究開発でリードするためには、欧米の巨大企業が取り組んでいるデータ駆動型アプローチとは異なる方法論の確立が重要であり、やはり人間、そして脳をしっかりと理解し、モデル化(理論化)⇒定量化⇒システム化の流れをどう創っていくのかが問われているように感じました(再び、感じたレベルで申し訳ございません)。

CAN会員の方で受講できなかった方は、ラップアップミーティングを除き、後日オンデマンドで視聴できますので、「私の感じたレベル」が正しいのかどうか、ぜひ視聴して確認ください!よろしくお願いします。またご意見も頂ければたいへん嬉しいです!

2023年度 アドバンスコース シラバス

最新記事