株式市場の非合理性をデータとAIで考える:岡田 克彦(関西学院大学ビジネススクール 教授)
本講演では、伝統的ファイナンス理論が前提とする合理的な株価評価と、現実に市場で観測される非合理的な価格形成との間に存在する乖離に焦点を当てます。GameStop株の騒動に代表される群衆行動や、インターネットバブル期における「.comプレミアム」現象や「NTT株の非合理的な価値評価」について考察します。さらに、こうした市場の非合理性をデータとAIを用いてどのように捉え、分析できるかについて議論します。講演では、講演者の2つの研究成果について紹介します。一つは、グラフ理論に基づいて群衆行動を可視化するモデルについてです。このモデルは、グラフ理論を援用したシンプルなモデルですが、非合理性の市場における発露をうまくとらえることが実証されています。もう一つは、大規模言語モデルを活用し、有価証券報告書の記述方法をセンチメント分類させ、そのスコアが株価の将来リターンと関連性を持つことを示すものです。金融市場の非合理性がどうして発生するのかについて考えるヒントとなればと思っています。
講師
岡田 克彦 先生
関西学院大学ビジネススクール 教授
講義:オンデマンド配信
お問い合せ先
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講師紹介
岡田 克彦(おかだ かつひこ)先生

現職
- 関西学院大学ビジネススクール 教授
経歴
1990年、ワシントン大学大学院MBA修了、1990-92年、モルガンスタンレー・ニューヨーク、1992年-96年、UBS証券東京のFVPを経て、1997年にヘッジファンドHalberdier Capital Singapore社を共同創業。2005年、神戸大学、博士(経営学)。同年より関西学院大学大学院経営戦略研究科専任講師、2007年より准教授、2011年より教授。2012年、投資助言会社Magne-Max Capital社を創業しCEO/CIO兼務。2015年にYahoo! Japanと資本提携し、AIで銘柄選択する投資信託を開発。2023年PayPayアセットマネジメント社へ事業譲渡。同年よりK2Q Capital Ltd., Londonの研究主幹を兼務。主な研究対象は、株式市場、価格形成。行動経済学会会長、公認会計士第2次試験委員、雑誌『行動経済学』編集委員長などを歴任。現在、証券アナリストジャーナル誌編集委員、証券アナリスト資格(CMA)試験委員、経営財務研究学会副会長。
研究概要
行動ファイナンス、資産価格評価と投資家心理、ナラティブの株式評価に与える影響
主な業績
著書
『金融市場の行動経済学ー行動とマーケットに見る非合理性の世界』(日本経済新聞社、共著2025年)、『Pythonによるビジネスデータサイエンス4, ファイナンスデータ解析』(朝倉書店、共編著2022年)、『ヤフーのビッグデータとAIが教える21世紀の投資戦略』(講談社、単著2018年)。
論文
“Financial forecasting in the lab and the field: Qualified professionals vs. smart students,” with Te Bao, Brice Corgnet, Nobuyuki Hanaki, Yohanes E. Riyanto, Jiahua Zhu, Journal of Behavioral Experimental Finance, 46, 2025. “Is No News Good News?: The streaming news effect on investor behavior surrounding analyst stock revision announcement,” with Takahiro Azuma and Yukinobu Hamuro, International Review of Finance, 14, 2014.