ダイバーシティの脳科学:個性の活かし方と支え方:守田知代(情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員)
現在、性別・年齢・文化的背景・障がいの有無など、多様な特性を持つ人々が個性を発揮しながら共に生きる「ダイバーシティ(多様性)」の実現が強く求められています。こうした多様性を真に理解し、活かすためには、その背後にある神経メカニズムを解明することが重要だと考えています。私はこれまで、いわゆる“定型発達”の成人の脳だけでなく、子どもから高齢者までの幅広い年齢層、さらには感覚障がい者、自閉スペクトラム傾向、不安傾向の高い人など、さまざまな背景をもつ人々の脳を対象に、その機能的・構造的な特徴を研究してきました。本講義では、行動だけでは捉えきれない個性の違いを、脳の違いから明らかにした事例などを紹介しながら、脳科学がダイバーシティ社会の実現にどのように貢献しうるのかを考察します。
講師
守田知代 先生
情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員
大阪大学大学院 生命機能研究科 招へい准教授
講義:オンデマンド配信
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講師紹介
守田 知代(もりた ともよ)先生
現職

- 情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員
- 大阪大学大学院 生命機能研究科 招へい准教授
経歴
- 2003年 京都大学大学院人間・環境学研究科修了(人間・環境学 博士)
- 2003-2006年 日本学術振興会 特別研究員 (PD)
- 2006-2009年 科学技術振興機構(JST) 研究員
- 2009-2013年 生理学研究所 特任助教
- 2013-2019年 大阪大学 工学研究科 特任講師
- 2019-2021年 大阪大学 先導的学際研究機構 特任准教授
- 2021-現在 情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員
研究概要
ヒトの脳は、誕生から成人に至るまで、約20年の時間をかけてゆっくりと成熟していきます。その間、脳内ではどのような変化が生じているのでしょうか? 私は、知覚・認知・情動・運動といった主要な脳機能に着目し、MRI計測や心理物理学的手法を用いたアプローチによって、脳の発達原理の解明を目指しています。 近年は特に、発達過程において脳機能が分化していくうえで重要な役割を果たす「抑制機構」に注目し、これに介入することで脳機能の改善を促す手法の開発にも取り組んでいます。この手法は、脳の発達支援にとどまらず、高齢者や感覚・認知に困難を抱える方など多様な人々の脳機能の最適化にも応用可能であると考えています。
主な業績
- Morita, T., & Naito, E. (2025). Gray matter volume increase in the retrosplenial/posterior cingulate cortices of blind soccer players. Frontiers in Neuroscience, 19, 1462481.
Morita, T., Hirose, S., Kimura, N., Takemura, H., Asada, M., & Naito, E. (2022). Hyper-adaptation in the human brain: Functional and structural changes in the foot section of the primary motor cortex in a top wheelchair racing Paralympian. Frontiers in Systems Neuroscience, 16, 780652. - Morita, T., Asada, M., & Naito, E. (2019). Developmental changes in task-induced brain deactivation in humans revealed by a motor task. Developmental neurobiology, 79(6), 536-558.
- Morita, T., Asada, M., & Naito, E. (2016). Contribution of neuroimaging studies to understanding development of human cognitive brain functions. Frontiers in Human Neuroscience, 10, 464.
- Morita T., Itakura S., Saito DN., Nakashita S., Harada T., Kochiyama T. & Sadato N. (2008). The Role of the Right Prefrontal Cortex in Self-evaluation of the Face: A Functional Magnetic Resonance Imaging Study. Journal of Cognitive Neuroscience, 20, 342-355.