2025年 アニュアルシンポジウム:量子科学と脳科学の融合~AI時代ゆえに求められる新たな脳科学のスキーム~ 開催レポート
2025年12月3日、JA共済ビルにおいて、開催された応用脳科学コンソーシアム2025年アニュアルシンポジウム「量子科学と脳科学の融合~AI時代ゆえに求められる新たな脳科学のスキーム~」は大盛況のまま無事終了いたしました。一般公開の本シンポジウムでは、対面もしくはオンラインにて多くの方にご参加(参加登録:約450人、参加:約400人)頂き、量子科学・神経科学分野における関心の高さを伺うことができました。

来賓ご挨拶では、内閣官房 内閣審議官、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 統括官(人工知能等担当)、内閣府 人工知能政策推進室 室長 福永 哲郎 氏より、量子×脳科学の政府における最重要分野としての位置づけについてご紹介いただきました。
基調講演では、3名の研究者の方々にご登壇頂き、各先生方の研究分野における量子科学・神経科学分野に関わる最新動向や将来展望等についてお話いただきました。理化学研究所 脳神経科学研究センター 脳型知能理論研究ユニット ユニットリーダー、京都大学 連携准教授 磯村拓哉 先生より「量子力学の数理的枠組みを応用した脳型知能理論 ~ベイズ推論と量子情報処理の関係~」、ZEN 大学 知能情報社会学部 教授 西郷 甲矢人 先生より「意識とクオリアの量子論的枠組み~量子力学の数学的基盤から意識や認知の科学的理解~」、量子科学技術研究開発機構 量子生命科学研究所 量子認知脳科学チーム チームリーダー、千葉大学連携教授/東北大学客員教授 山田 真希子 先生より「観測する脳と関係する心 ~量子論的認知神経科学の新しい展望~」をテーマとしたご説明をいただきました。
次に、CAN事務局長の萩原一平より、2025年度CAN活動状況および2026年度CAN活動予定について説明いたしました。
最後に、武田氏(経済産業省)、倉田氏(文部科学省)、大野氏(総務省)より、各省庁における量子科学・神経科学分野に関わる取組紹介の後、「「量子科学」の適用可能性と脳科学の進化~量子科学技術は飛躍的に脳科学を進化させるのか~」をテーマに、ご登壇頂いた磯村先生、西郷先生、山田先生、武田氏、倉田氏、大野氏とCAN事務局長 萩原によるパネル討論を実施いたしました。量子科学と脳・神経科学分野の応用研究開発・社会実装の可能性、更にはAI全盛時代を踏まえた融合研究開発の可能性等について活発な議論が行われました。
シンポジウム後に開催された懇親会では、ご登壇頂いた先生方、来場者同士での情報交換が行われ、盛況のうちに終了となりました。
開催日時
2025/12/3(水)13:00~17:30(懇親会17:30~19:30)
開催場所
JA共済ビルカンファレンスホール(東京都千代田区平河町2-7-9 JA共済ビル1F)
プログラム

講演者プロフィール
磯村 拓哉 先生
ご所属・ご経歴
理化学研究所 脳神経科学研究センター 脳型知能理論研究ユニット ユニットリーダー/京都大学 連携准教授
脳型知能理論研究ユニットでは、脳の知能の普遍的な特性を数学的に記述する理論の構築を行っている。生物は、脳内の生成モデル(内部モデル)を最適化することで感覚入力の背後にあるダイナミクスや原因を推論し、自らの行動戦略を周囲の環境に適応させることができると考えられているが、我々は、神経回路やシナプス可塑性がこれらの能力をどのように実現しているのかを明らかにするため数理手法を用いた研究を行っている。特に、既存の人工知能に対して生物の知能が優れている点を数理的に理解することを目指す。
文科省科研費学術変革領域(A)「予測と行動の統一理論の開拓と検証」(2023 ~ 2027)領域代表
西郷 甲矢人 先生
ご所属・ご経歴
ZEN 大学 知能情報社会学部 教授
専門は数理物理学(量子場の数理)および非可換確率論であるが、圏論への造詣も深く、これらの理論を基盤に、近年ではその探求領域を数学・物理学のみならず認知科学や意識の問題へと広げている。
中でも、量子論の数学的構造を用いて認知現象を記述しようとする「量子認知」や、主観的経験の質(クオリア)を、それらがなす構造を通じて解明しようとする「クオリア構造」アプローチへの貢献などが注目されはじめている。
『〈現実〉とは何か』(筑摩書房、田口茂氏との共著)、『圏論の道案内』(技術評論社、能美十三氏との共著)など著書多数。
山田 真希子 先生
ご所属・ご経歴
量子科学技術研究開発機構 量子生命科学研究所 量子認知脳科学チーム チームリーダー、千葉大学連携教授/東北大学客員教授
量子論的視点から人間の心と脳のはたらきを再定義する「量子論的認知神経科学」の構築に取り組んでいる。神経活動や認知、感情、意識といった心のプロセスを、観測や関係性といった量子論に由来する概念をもとに理論的に探究し、人間の内的経験の科学的理解をめざす。現在ムーンショット型研究開発事業・目標9「逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現」のプロジェクトマネージャーとして、困難に直面する人々の心のレジリエンスや回復力を支える新しい科学的基盤と社会実装のかたちを模索している。物理学・神経科学・心理学・哲学を横断しながら、人と人、人と社会のあいだに生まれる“ 心の現象” の理解に挑んでいる。
福永 哲郎 氏
ご所属・ご経歴
内閣官房 内閣審議官、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 統括官(人工知能等担当)、内閣府 人工知能政策推進室 室長
鹿児島県出身。東京大学経済学部卒。1991年、通商産業省(現経済産業省)入省。内閣官房副長官補付参事官補佐、内閣官房国家戦略室参事官、大臣官房サイバー国際経済政策統括調整官、大臣官房審議官(通商政策局担当)、デジタル庁審議官等を経て、2025年内閣府 内閣審議官に着任し、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 統括官(人工知能等担当)を兼務。2025年8月より現職。
武田 伸二郎 氏
ご所属・ご経歴
経済産業省 イノベーション・環境局 イノベーション政策課長
東京大学法学部卒、デューク大学LLM、オックスフォード大学MBA。平成12年に通商産業省入省。原子力国際協力推進室長、ジェトロニューヨーク産業調査員、企業行動課長などを経て、令和6年7月よりイノベーション政策課長に着任。日本のイノベーション政策やフロンティア領域の技術開発支援、量子コンピュータの産業化促進等を担当。
倉田 佳奈江 氏
ご所属・ご経歴
文部科学省 研究振興局 ライフサイエンス課長
2025年4月から現職にて、生命科学・医学系の基盤的な研究開発や、再生・細胞医療・遺伝子治療研究、脳神経科学研究等のライフ・コースに着目した研究開発の推進等を担当。2002年に文部科学省入省後、2018年宇宙利用推進室長、2023年研究開発戦略課長、2024年国際戦略担当参事官等を務め、現職。この間、九州大学(2009-)、在英国日本国大使館(2014-)等にも出向。
大野 誠司 氏
ご所属・ご経歴
総務省 国際戦略局 技術政策課 研究推進室長
2003年に総務省入省。外務省在インド日本大使館一等書記官、前橋市副市長、革新的情報通信技術開発推進室長等を務め、情報通信技術の開発・制度化、社会実装、海外展開等に携わるとともに、ICTを活用したまちづくりや地域活性化の実践等に従事。2025年7月より現職。AI、脳情報通信、量子通信をはじめ情報通信技術に関する研究開発・社会実装の推進等を担当。








