1. HOME
  2. 応用脳科学アカデミー
  3. 2022年度
  4. 視覚学習における睡眠の役割:玉置 應子(理化学研究所 脳神経科学研究センター 認知睡眠学理研白眉研究チーム 理研白眉チームリーダー)

応用脳科学アカデミー

2022年度

視覚学習における睡眠の役割:玉置 應子(理化学研究所 脳神経科学研究センター 認知睡眠学理研白眉研究チーム 理研白眉チームリーダー)

視覚学習とは、視覚的な経験をした後である特徴においてパフォーマンスの向上が比較的長く続くことを指す。視覚学習では訓練後の睡眠期間が重要な役割を果たすことが示唆されている。睡眠に伴う視覚学習の向上には、少なくとも2つの異なる側面がある。技能のオフラインゲインと干渉に対する頑健さである。発表者らは、これらの2側面における、ノンレム・レム睡眠中の脳の可塑性(環境や刺激に対して脳の変化しやすい特徴)の役割を検証した。ヒトの睡眠中の視覚野における脳の可塑性を非侵襲的に調べるため、MRスペクトロスコピーと睡眠ポリグラフの同時計測を実施し、グルタミン酸(Glx)とγアミノ酪酸(GABA)の濃度を計測した。これらの比をとり、脳の興奮抑制(EI)バランス(視覚野の可塑性と相関する)を求めた。その結果、ノンレム睡眠後にはオフラインゲインがみられたが、干渉に対する頑健さにはレム睡眠が必要不可欠であった。視覚野におけるEIバランスはノンレム睡眠中に増加しレム睡眠中に低下した。ノンレム睡眠時のEIバランスはオフラインゲインと相関し、レム睡眠時のEIバランスは干渉に対する頑健さと相関した。ノンレム睡眠とレム睡眠は、視覚学習において、相反する神経化学的プロセスに基づき、相補的な役割を果たす可能性がある。

講師

玉置 應子 先生
理化学研究所 脳神経科学研究センター 認知睡眠学理研白眉研究チーム 理研白眉チームリーダー

日時

2022年8月19日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※玉置先生の講義は、13:00~14:10です。

場所

オンライン講義 ※変更になりました

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、 「各種お問い合わせフォーム」 より、お問い合わせください。

講師紹介

玉置 應子(たまき まさこ)先生

現職

  • 理化学研究所 脳神経科学研究センター 認知睡眠学理研白眉研究チーム 理研白眉チームリーダー

経歴

  • 2007 – 2009 – マサチューセッツ総合病院 マルチノスセンター / ハーバード大学 研究員
  • 2006 – 2010 日本学術振興会 特別研究員
  • 2010 – 2012 株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
  • 2012 – 2020 ブラウン大学
  • 2020 – 2021 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
  • 2021/04 – 現在 国立研究開発法人 理化学研究所

研究概要

私たちは日々、新しいことを学んだり、閃いたり、行動の選択を行なったりしています。何がこのような思考や行動を影響したり決定づけたりしているのでしょうか?実は覚醒中だけではなく、睡眠中の脳活動が、私たちの思考や行動において、重要な役割を果たす可能性が示唆されています。当研究チームでは、生理学的な指標、心理物理学実験、ニューロイメージングなど様々の技術を用いて、人の覚醒および睡眠中の脳の活動を調べることで、認知機能における睡眠の役割を明らかにしたいと考えています。

主な業績

  • Tamaki, M., and Sasaki, Y.: Sleep-dependent facilitation of visual perceptual learning is consistent with a learning-dependent model. Journal of Neuroscience, 42(9), 1777-1790. (2022).
  • Tamaki, M., Wang, Z., Barnes-Diana, T., Guo, D., Berard, AV., Walsh, E.G., Watanabe, T., and Sasaki, Y.: “Complementary contributions of NREM and REM sleep to visual learning” Nature Neuroscience 23, 1150-1156. (2020).
  • †Tamaki, M., †Berard, A.V., Barnes-Diana, T., Siegel, J., Watanabe, T., and Sasaki, Y.: “Reward does not facilitate visual perceptual learning until sleep occurs” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 117, 959-968. (2020). (†Co-first author)
  • Tamaki, M., and Sasaki, Y.: “Surveillance during REM sleep for the first-night effect” Frontiers in Neuroscience 13:1161. (2019).
  • Shibata, K., Sasaki, Y., Bang, J.W., Walsh, E.G., Machizawa, M.G., Tamaki, M., Chang, Li-Hung., and Watanabe, T.: “Overlearning hyperstabilizes a skill by rapidly making neurochemical processing inhibitory-dominant” Nature Neuroscience 20, 470-475. (2017).
  • Tamaki, M., Bang, J.W., Watanabe, T., and Sasaki, Y.: “Night watch in one brain hemisphere during sleep associated with the first-night effect in humans” Current Biology 26, 1190-1194. (2016).
  • Tamaki, M., Bang, J.W., Watanabe, T., and Sasaki, Y.: “The first-night effect suppresses the strength of slow- wave activity originating in the visual areas during sleep” Vision Research 99, 154-161. (2014).
  • Tamaki, M., Huang, T.R., Yotsumoto, Y., Hämäläinen, M., Lin, F.H., Náñez, J.E. Sr., Watanabe, T., and Sasaki, Y.: “Enhanced spontaneous oscillations in the supplementary motor area are associated with sleep-dependent offline learning of finger-tapping motor-sequence task” Journal of Neuroscience 33, 13894-13902. (2013).
  • Horikawa, T., Tamaki, M., Miyawaki, Y., Kamitani, Y.: “Neural decoding of visual imagery during sleep” Science 340, 639-642. (2013).

             

関連講義