甘味受容体の違いと嗜好性や神経回路の関連:中村 優子(国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報インタラクション研究部門 主任研究員)
同じ味質を感じさせる場合でも、それを引き起こす物質はさまざまです。たとえば、苦味を引き起こす物質にはカフェインやカテキンなどが、うま味を引き起こす物質にはグルタミン酸やイノシン酸などがあります。では、このように同じ味質感覚を刺激する複数の物質を、ヒトは見分けることができるのでしょうか。それぞれの物質は栄養素として異なる生理的役割を担っているため、ヒトは同じ味質感覚を引き起こす異なる物質を識別できる可能性があります。特に甘味は、生きていくうえで不可欠なエネルギー源(糖質)の存在を脳に知らせるシグナルとしての生理的意義をもっています。この点をふまえると、低カロリーの甘味物質と、砂糖のようにカロリーを豊富に含む甘味物質とを区別する神経システムが存在すると考えられますが、その詳細はこれまで分かっていませんでした。そこで本講義では、甘味受容体への作用の違いに基づいて、さまざまな甘味物質に対する脳活動や神経結合が異なるのかどうかを、脳機能計測によって評価した事例を紹介します。
講師
中村 優子先生
国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報インタラクション研究部門 主任研究員
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講師紹介
中村 優子(なかむら ゆうこ)先生
現職

国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域
人間情報インタラクション研究部門 主任研究員
経歴
2011年 九州大学歯学研究院 博士課程修了 (歯学 博士)
2011-2012年 九州大学歯学研究院 助教
2012-2013年 九州大学病院 医員
2013-2014年 九州大学歯学研究院 助教
2013-2016年 Yale大学 The John B. Pierce Laboratory Postdoctoral research associate
2016-2017年 東京大学大学院総合文化研究科 進化認知科学研究センター 特任研究員
2018-2022年 東京大学大学院総合文化研究科 人間行動科学研究拠点 特任助教
2022-2026年 東京大学大学院総合文化研究科 心の多様性と適応の連携研究機構 准教授
2026年-現在 国立研究開発法人産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報インタラクション研究部門 主任研究員
研究概要
食べるという行為は、生命維持において最も重要な活動の一つです。しかし、その制御システムの詳細は、未だによく分かっていません。摂食行動には、空腹や満腹といった生理的要因が強く関係しています。しかし、それだけではなく「口寂しいから食べる」「ストレスを感じたから食べる」「好物だから別腹」といった精神的要因も影響します。さらに、「健康診断で内臓脂肪が多いと言われた」「家族や友達から太ったと言われた」「太っていると恥ずかしい」といった社会心理的要因や、「最近パンが値上がりしたからごはんにする」「動物愛護や環境保護の観点から菜食主義を心がける」といった経済的・社会的要因も関連してきます。このようにさまざまな要因が影響する摂食制御システムを生理・神経学的に追究し、健康的な食生活をサポートするデジタルデバイスの開発に繋げていきたいと考えています。
主な業績
- Nakamura, Y., Takahashi, R., Ohkuri, T., 2025. A low-calorie rebaudioside D-glucose-sodium sweetener matches sucrose in palatability and neural responses in a functional MRI study of healthy adults. Front Nutr 12, 1699670. https://doi.org/10.3389/fnut.2025.1699670
- Nakamura, Y., Hayashi, K., Maikusa, N., 2025. Self-consciousness negatively mediates the positive association between internalized weight bias and weight status in cross-cultural survey and brain imaging study. Front Psychiatry 16, 1703291. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2025.1703291
- Nakamura, Y., Ishida, T., 2024. The effect of multiband sequences on statistical outcome measures in functional magnetic resonance imaging using a gustatory stimulus. Neuroimage 300, 120867. https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2024.120867
- Nakamura, Y., Koike, S., 2024. Daily fat intake is associated with basolateral amygdala response to high-calorie food cues and appetite for high-calorie food. Nutr Neurosci 27, 809–817. https://doi.org/10.1080/1028415X.2023.2260585
- Nakamura, Y., Yamasaki, S., Okada, N., Ando, S., Nishida, A., Kasai, K., Koike, S., 2024. Macronutrient intake is associated with intelligence and neural development in adolescents. Front Nutr 11, 1349738. https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1349738