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応用脳科学アカデミー

アドバンス 2021年度

エキスパートの心脳限界突破 ~音楽と運動・知覚・認知の関係を探る~:古屋 晋一

エキスパートの演奏家は,幼少期からトレーニングを積み,卓越した演奏技能を獲得しています.しかし,こうしたスキルを頑健にするため,私たちの脳神経系には,トレーニングによってさらにスキルを向上することが困難となる「天井効果」という特徴の存在が知られています.そのため,一般的なトレーニング方法は,エキスパートには必ずしも有効ではなく,特殊にデザインされたトレーニング方法が,スキルの限界を突破するために必要となることが少なくありません.このような問題は,従来の神経科学や心理学といった学問では十分に検討されておらず,学際的なアプローチによってエキスパートの脳と身体と心の特性を理解し,その原理に基づいたトレーニングを開発・評価する新しい取り組みが求められています.音楽家のための熟達支援と故障予防を目指した「ダイナフォーミックス」は,医工芸連携による新しい学問領域であり,演奏家の超絶技巧やアガリ,局所性ジストニアなどの障害の背景にある脳神経メカニズムを明らかにし,ロボティクスやHCI,非侵襲脳刺激やBMIを利活用した新しいトレーニングを開発することに取り組んでいます.本講演はこうしたダイナフォーミックス研究の主要な成果について紹介し,それらを演奏や指導の現場に一気通貫に還元する仕組みであるMusic Excellence Projectに基づいて,新しい学問のありかたについて議論します.

講師

古屋 晋一 先生
ソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL) シニアリサーチャー・シニアプログラムマネージャー

日時

2021年10月26日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※古屋先生の講義は、15:40~16:50です。

場所

オンライン開催

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、 「各種お問い合わせフォーム」 より、お問い合わせください。

講師紹介

古屋 晋一(ふるや しんいち)先生

現職

  • ソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL) シニアリサーチャー・シニアプログラムマネージャー
  • 上智大学 特任准教授
  • 社団法人NeuroPiano代表理事

経歴

  • 1998年-2002年 大阪大学 基礎工学部 システム科学科 学士(工学)
  • 2002年-2004年 大阪大学大学院 人間科学研究科 博士前期課程 修士(人間科学)
  • 2004年-2005年 大阪大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程
  • 2005年-2008年 大阪大学大学院 医学系研究科 博士課程 博士(医学)
  • 2008年-2009年 関西学院大学 理工学研究科 ヒューマンメディア研究センター 博士研究員
  • 2009年-2011年 ミネソタ大学 神経科学部 博士研究員
  • 2011年-2014年 ハノーファー音楽演劇大学 音楽生理学・音楽家医学研究所 博士研究員
  • 2014年‐2017年 上智大学 理工学部 情報理工学科 准教授
  • 2017年‐ 現職

研究概要

音楽を愛する全ての人が、心に思い描いた表現を身体に無理なく創造するため、音楽演奏の脳神経メカニズムや身体運動・感覚技能の熟達支援法,音楽家の脳神経疾患について研究する「ダイナフォーミックス」に取り組んでいます.さらに,その成果を身体教育やシステム開発を通して社会実装し,現場のニーズに基づいて研究・開発を更新する活動を行っています.

主な業績

著書(計10報)
  • ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム (2012)春秋社
  • Eckart Altenmüller, Shinichi Furuya (2018) Chapter 29 “Brain Changes Associated with Acquisition of Musical Expertise” Cambridge Handbook on Expertise and Expert Performance Cambridge University Press
論文(計68報)
  • Hirano M, Sakurada M, Furuya S (2020) Overcoming the ceiling effects of experts’ motor expertise through active haptic training. Science Advances 6: eabd2558
  • Furuya S, Nitsche MA, Paulus W, Altenmüller E (2014) Surmounting retraining limits in musicians’ dystonia by transcranial stimulation. Annals of Neurology 75(5): 700-707
主な受賞
  • ドイツ研究振興会(DFG)Heisenberg Fellowship
  • Klein Vogelbach Prize
  • 文部科学省 卓越研究員

             

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