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応用脳科学アカデミー

2023年度

音楽療法と脳科学 ~ 失語症に対するメロディックイントネーションセラピー ~:佐藤 正之(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師)

 失語症の原因の大多数は脳卒中すなわち脳梗塞や脳出血です。脳は一度障害を受けると,少なくとも現在の医学では,完全に元通りにはなりません。脳卒中により失語症を生じると,その方は残りの人生を不自由な言葉とともに過ごすことになります。本邦には50~100万人の失語症患者がいます。脳神経内科領域でもっとも患者数が多い難病の一つであるパーキンソン病の患者数が約 20万人であることを考えると,失語症を患う患者の多さが分かると思います。
 メロディックイントネーションセラピー(Melodic Intonation Therapy, MIT)は,1970年代初めに米国で開発された失語症の訓練法です。MIT の有効性は確立しており,米国神経学会のガイドラインにも記載されています。発話には,文法や意味,音韻などの言語学的要素と,リズムやアクセント,イントネーションといった非言語学的要素が関与しています。失語症への通常の訓練が主に前者に重きを置いているのに対し,MIT は後者を介して失語症患者の発話の改善を図るものです。現法の英語と言語構造が異なる本邦には,関らによって1980年代半ばに導入され,MIT 日本語版(MIT-J)と命名されました。MIT は,言語の持つ音楽的要素を介して,障害された脳に新たな発話の strategy を作り上げようとするものです。MIT-J の啓発と資格発行を目的として,2022年5月に一般社団法人日本メロディックイントネーションセラピー協会が発足しました。
 本講演では,音楽の脳内機構を解説した後に,MIT について自験例を含めて紹介いたします。

講師

佐藤 正之 先生
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師

日時

2023年11月22日(水)13:00~17:30(12:40より受付開始)第3部 15:40~16:50
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。

場所

オンライン(Zoom)

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

佐藤 正之(さとう まさゆき)先生

現職

  • 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師

経歴

  • 昭和38年 大阪生まれ
  • 昭和57年 大阪府立三国丘高等学校卒業、相愛大学音楽学部器楽科入学
  • 昭和61年 相愛大学卒業。府立高校音楽教諭を経て、
  • 昭和63年 三重大学医学部入学
  • 平成 6年    同    卒業、同大学神経内科に入局
  •      市立伊勢総合病院、東京都神経科学総合研究所等を経て、
  • 平成15年 7月 三重大学医学部神経内科助手
  • 平成21年 1月、東北大学大学院医学系研究科 高齢者高次脳医学講座 准教授
  • 平成22年 4月 三重大学大学院医学系研究科 認知症医療学講座 准教授
  • 令和 2年 8月~ 5年 3月 東京都立産業技術大学院大学 認知症・神経心理学講座 特任教授
  • 令和 5年 8月~ 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師

研究概要

専門は神経内科学、神経心理学、認知症医療学。認知症や、失語をはじめとする高次脳機能障害の診療を通して、ヒトの脳機能なかでも音楽の脳内認知機構を中心に研究するとともに、音楽療法のエビデンスの確立を目指して活動している。

主な業績

著書
  • 佐藤正之 「現役医師:その仕事で大事なこと」 22世紀アート、2021、東京
  • 佐藤正之・田部井賢一 「医療関係者のための脳機能研究入門:神経心理学と脳賦活化実験」 北大路書房、2020、京都
  • 佐藤正之 「音楽療法はどれだけ有効か:科学的根拠を検証する」化学同人、2017、京都
  • 佐藤正之 「音楽療法はどれだけ有効か:科学的根拠から探るその可能性」 同人文庫、2023、京都
学術論文(国際誌)
  • Satoh M, Tabei K, Abe M, Kamikawa C, Fujita S, Ota Y. The correlation between a new online cognitive test (the Brain Assessment) and widely used in-person neuropsychological tests. Dement Geriatr Cogn Disord. 2021, 50: 473-481. Doi: 10.1159/000520521. 
  • Satoh M, Tabei K, Fujita S, Ota Y. Online tool (Brain Assessment) for the detection of cognitive function changes during aging. Dement Geriatr Cogn Disord. 50: 85-95, 2021. Doi: 10.1159/000516564.
  • Satoh M, Ogawa JI, Tokita T, Matsumoto Y, Nakao K, Tabei KI, Kato N, Tomimoto H. The Effects of a 5-Year Physical Exercise Intervention with Music in Community-Dwelling Normal Elderly People: The Mihama-Kiho Follow-Up Project. J Alzheimers Dis. 78: 1493-1507, 2020 Nov 7. doi: 10.3233/JAD-200480.
  • Satoh M, Matsuyama H, Asahi M, Matsuura K, Kida H, Tomimoto H. Non-converter mild cognitive impairment with cerebral amyloid angiopathy may be included among persistent amnestic mild cognitive impairment: a case report. Psychogeriatrics, 1-3, 2020. Doi: 10.1111/psyg.12545. 

他国際誌 66編, 国内誌 99編

             

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