1. HOME
  2. 応用脳科学アカデミー
  3. 2021年度
  4. アドバンス 2021年度
  5. 脳と身体とVR2.0:廣瀬 通孝(東京大学 名誉教授)

応用脳科学アカデミー

アドバンス 2021年度

脳と身体とVR2.0:廣瀬 通孝(東京大学 名誉教授)

VR(バーチャル・リアリティ)とは、実際には存在しない世界を人工的に合成し、疑似体験することを可能ならしめる技術である。この技術が登場してすでに4半世紀がたち、社会のいろいろな場所に根をおろしつつある。この技術は感覚研究と不可分な関係にあり、感覚の理解がこの技術の今後の進展の鍵となっている。というのは、人が外界で感じるのは感覚を通してであって、世界を合成することは感覚信号を合成することに他ならないからである。

初期のVR技術といえば、やみくもに感覚信号を模擬する装置を作る試みが多く、費用対効果の面からもあまり洗練されたものではなかった。もっと効果的な方法論はないのか、というのが最近のVR研究の1つの方向となっている。

感覚には錯覚という現象があり、これを上手に利用することによっておどろくほど単純な仕掛けで実際とは異なる感覚を生成できることが知られている。錯覚という現象も単一の感覚内で起こるもの、複数の感覚にわたるものなど色々あるが、昨今、注目を集め始めたのが、後者すなわち感覚間相互作用(クロスモーダリティ)である。

VR技術にクロスモーダル概念を取り込むことによって、ある感覚の合成が他の感覚刺激にも使えることになり、先述の費用対効果の問題に加えて、これまではさまざまな技術的理由により人工的には合成不可能だった感覚も人工的に惹起できるようになる。たとえば、味覚などはその良い例で、こうした感覚についても、ディスプレイ開発の可能性がひらけてきたのである。

言うまでもないことであるが、感覚の生成はその受容器における情報処理のみならず、中枢での情報処理が重要な役割を占めている。そこに脳が介在することによって、錯覚現象などもひきおこされるのである。感覚が生成されると、そこに意味が付与され、最終的には感情や感性などという、より高次な機能へとつながっていく。

本講演では、VR研究における感覚ディスプレイ研究に焦点をあてつつ、最近のクロスモーダル技術の現状について紹介し、さらに感情の惹起のような高次な心理過程をどうとりあうかなど、さらに将来的な研究課題についても触れてみたいと思っている。

講師

廣瀬 通孝 先生
東京大学 名誉教授

日時

2021年12月21日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※廣瀬先生の講義は、13:00~14:10です。

場所

オンライン開催

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

廣瀬 通孝(ひろせ みちたか)先生

現職

  • 東京大学 名誉教授
  • 東京大学先端科学技術研究センター サービスVRプロジェクト プロジェクトリーダー(特任研究員)

経歴

  • 1954年5月7日生まれ、神奈川県鎌倉市出身
  • 1982年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了 工学博士
  • 1982年 東京大学工学部産業機械工学科 専任講師
  • 1983年 東京大学工学部産業機械工学科 助教授
  • 1999年 東京大学大学院工学系研究科 教授、東京大学先端科学技術研究センター 教授
  • 2006年~2020年 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
  • 2018年~2020年 東京大学連携研究機構バーチャルリアリティ教育研究センター機構長
  • 2020年4月~現在 東京大学先端科学技術研究センター サービスVRプロジェクト プロジェクトリーダー(特任研究員)

研究概要

専門はシステム工学、ヒューマン・インタフェース、バーチャル・リアリティ。

主な業績

主な著書に「バーチャル・リアリティ」(産業図書)。総務省情報化月間推進会議議長表彰、東京テクノフォーラムゴールドメダル賞、大川出版賞、など受賞。

日本バーチャルリアリティ学会会長、日本機械学会フェロー、産業技術総合研究所研究コーディネータ、情報通信研究機構プログラムコーディネータ等を歴任。

             

関連講義